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評者◆ベイベー関根
下ネタよりサラリーマンネタの方がエラいというわけでは決してないが。――田中圭一『プリンセス破天荒』(本体九五〇円)、『サラリーマン田中K一がゆく!』(ともに角川書店、本体九八〇円)
プリンセス破天荒、サラリーマン田中K一がゆく!
田中圭一
No.2883 ・ 2008年08月30日




 皆さんこんにちわ、一條裕子がまったく面白くないベイベー関根です。
 さて、『ドクター秩父山』が世に出たころからずっとウォッチし続けていただけでなく、『ドクター秩父山』湯呑みまでもっていながら、『鬼堂龍太郎・その生き様』をあえてスルーしてしまった身としては、今回の田中圭一の2冊同時刊行に快哉を叫ばぬわけにはいかなかろうて! グハハハ!
 というわけで、今や手塚治虫の絵を駆使してくっだらない下ネタを連発することで有名な田中圭一が先月あたまに刊行した『プリンセス破天荒』『サラリーマン田中K一がゆく!』の2冊に、ひと月遅れで連続トライだ!『プリンセス破天荒』は、ゲームプロデューサーをしていたこともある作者田中の経験を生かしたゲーム業界もの(ちなみに、本連載で、うめ『大東京トイボックス』を取り上げようかと真剣に悩んだこともあったんだが、こういう「オトナなのに夢さえもってりゃ後は泣いたりわめいたりしてれば何とかなる」世界っちゅうのが、どお~しても許せないんじゃ! そんなのは童貞率の高い高校生までにしとけ!)。女社長とオタク、サツバツ好きの3人が、クライアントを相手に売れる企画をひねり出そうと苦心惨憺・七転八倒するという内容で、笑えてしかもタメになるあたりの匙かげんはさすが。持ちネタの手塚絵・本宮ひろ志絵だけでなく、最後の方には西原理恵子絵・松本零士絵まで飛び出すぞ! んー、後は女社長がもうちょっとエロ方面でからんでくれればよかったかな……。
 しかし、今回の真の収穫は、『サラリーマン田中K一がゆく!』であることよのう! ふぉっふぉっ!
こちらは、やはり作者のおもちゃ会社勤務時代の経験を生かしたコメディだが、下ネタをややおさえつつ、ライバル会社との死闘を主軸に、ストーリーを前面に押し出しており、以前の類作『ヤング田中K一』をしのぐ感動的な展開が待っている。社会人たるもの、根性は必要だがそれだけではダメで、マーケティングと仕掛け(そして少々の運)が必要だってことだな! 各キャラも立ちまくりで楽しいが、80年代の雰囲気を覚えている人なら、さらにグッと来ること請け合いだ。帯→表紙→カバーの三段スライドネタ方式にも注目されたし!
 もちろん田中圭一の持ち味が身も蓋もない下ネタにあるのは間違いなく、次回はこの反動で、どエロ!&どバカ!な作品を描いてくれる……んじゃないかな、たぶん。
 ところで、ご存じのとおり、田中圭一は、初期のアクの強い絵から意図的に路線を変更し、手塚絵などパロディの技法を習得したわけだが、これとまったく逆なのが、しりあがり寿だ。彼はパロディ漫画からスタートして、『真夜中の弥次さん喜多さん』から独自の絵柄を主張していくようになったわけだが、この対称性はめちゃめちゃ興味深いよな~。どっかで対談とか企画すればいいのに!







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