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評者◆秋竜山
何が正しい日本語?、の巻
No.2883 ・ 2008年08月30日




 おもしろがる。おもしろがらなければ、ちっとも、おもしろくない。テレビがそうだ。テレビを観るには、おもしろがるエネルギーが必要だ。「ヨシ!! おもしろがってやるぞ」という心がまえ。読書にもいえるだろうか。白石良夫『かなづかい入門――歴史的仮名遣VS現代仮名遣』(平凡社新書、本体七四〇円)を、おもしろがろうと、かなり気合いを入れて読んだ。そのせいか、かなり効きめがあったみたいだ。
 〈近代の日本人は、明治以来終戦まで、ある規範(規則)の仮名遣を学校で教えられた。その規範仮名遣を、こんにちでは「歴史的仮名遣」(俗に「旧仮名遣」)と呼ぶ。戦後の昭和二一年一一月、その仮名遣にかわって、新しい規範の仮名遣が内閣から告示された。それを「現代仮名遣」(俗に「新仮名遣」)という。〉(はじめに)
 昔の本など読むと、いかにも昔風であっておもしろい。それは「歴史的仮名遣」であるからだ。「現代仮名遣」の今の本が、言葉の使いかたが、安っぽいように思えてくる。
 〈ギョエテとはおれのことかとゲーテ言い。〉〈「ギョエテ」「ギョオテ」「ギエーテ」「ゲエテ」「ゲーテ」「ゴエテ」といくら工夫してみたところで、いや、工夫すればするほど表記が多様になるだけで、時代の標準的な表記には収斂しない。〉(本書より)
 現代語としては、「ゲーテ」だろう。ゲーテも「ゲーテ」と呼ばれれば納得するだろう。ところが、もしギョエテに対して、ゲーテと呼んだら、「オイ!! それ、おれのことかい」と、言うに違いあるまい。昔は、ギョエテ、今はゲーテ。昔の名前で出ています!! という歌があった。
 〈ひとは、最初に教えられたことを正しいと信じる動物である。仮名遣を発音の規則だと信じて大人になったひとは、けっこう多い。それも、言葉に関心をもったひと、言葉に厳しいと自負がある、そのことをみずからに言い聞かせているから、この誤った思い込みは根がふかい。〉(本書より)
 これは、いえるかもしれない。最初に教わったことが大問題である。何を教わったかだ。つまらんことを教わったばかりに人生負い目をみることになってしまったなんてことになる。だったら何も教わらないほうがいい。正しいことを教わるべきだろうが、では、何が正しいのか、これがわからない。日本語でいえば、
 〈自分たちが日常つかっている言葉、それが正しい日本語である〉(本書より)
 と、いうわけだ。
 〈言葉についての内省が少ないひとほど、知識として刷り込まれた言葉は大きな意味をもっていない。だから、簡単に捨てることができる。知らないうちに捨てている。ところが、言葉を専門にあつかう種類のひと、たとえば頭のかたい国語国文学者や国語教育者、あるいは言葉に厳しいと自負する文筆家は、そうはいかない。言葉に関する刷り込まれた知識は、そのひとにとって、ほとんど人格にも等しいから、それを容易に捨てきれない。(略)意思の伝達ができなくなった今の世相が嘆かわしい、と思っている。かれらは、自分たちの日常つかっている言葉こそが正しい日本語だという、きわめて単純な原理に思い到らない。〉(本書より)
 頭がかたくなるということは日本語にもよくないってことのようだ。







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