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評者◆米田綱路
新聞はみずからの生理と戦えるのか――「兵器」となった組織ジャーナリズムの自己検証
新聞と戦争
朝日新聞「新聞と戦争」取材班
戦争絶滅へ、人間復活へ――九三歳・ジャーナリストの発言
むのたけじ 著 黒岩比佐子 聞き手
No.2882 ・ 2008年08月16日
ドイツの作家エーリヒ・ケストナーは、「独裁政治が差し迫ってくるとき、戦いが可能なのはそれが権力を握るまえだけです」と述べたことがある。彼はナチ党の政権掌握後、焚書でみずからの本が焼かれるのを目撃した。ドイツ民衆の熱狂的支持を背景に、合法的に政権を掌握したナチ党の勢いは、もはや押しとどめようがなかった。そして、文化を焼き滅ぼさんとした焚書は、人間を焼く戦争と虐殺への序曲だった。ケストナーはナチ党の勢いを「雪玉」にたとえ、それが雪崩になってしまえば、もはや誰にも止められはしないとも述べた。
本書『新聞と戦争』がケストナーのこのことばを引いているのは、それが「ナチス・ドイツと共に歩んだ日本にも向けられているように読める」からである。本書は、この時代の戦時報道とその後を包括的に検証し、なぜ新聞が戦争を止められず、戦争協力への深みにはまっていったのかを、歴史をフィールドとした調査報道の手法で追った、朝日新聞の一大企画の単行本化である。 たしかに、戦争と新聞の関係を考えるとき、ケストナーのことばは示唆的だ。しかし、日本の「雪玉」が雪崩になる途上で新聞が果たした役割を再検証するとき、独裁政治が権力を握る前に、はたして新聞の戦いなど可能だったのか、と問いたい衝動に駆られる。そもそも新聞... 【現在、図書新聞を定期購読されている方】 から「ご契約者のお名前」「郵便番号、ご住所」「メールアドレス」「ID・パスワード新規取得」の旨をご連絡ください。 【定期購読されていない方】 定期購読契約が必要です。 こちらから をしてください。 |
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