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評者◆秋竜山
テレビって何だ?!、の巻
No.2881 ・ 2008年08月09日




 速水敏彦『他人を見下す若者たち』(講談社現代新書、本体七二〇円)で、「笑い」について述べられている。〈「笑いの変質」〉では、現代の笑い。
 〈筆者の子ども時代に比べて、人々が笑う機会が多くなったように思う。それはテレビの影響が大きい。最近はどのテレビ番組でも、視聴者を笑わせようとやっきになっている。私が子どもの頃の昭和三〇年代前半は、テレビなど裕福な家にしかなかったので、映像文化と言えば、たまに小遣いをはたいて町まで映画を見に出かけるか……(略)昔の映画は笑いの場面よりは悲しみの場面の方が圧倒的に多かった。〉(本書より)
 良いも悪いも、時代の中で、なにかにつけてテレビである。テレビというものは、いったい何ものなのか!! テレビ無しの人生など考えられないようだ。しかし、テレビ無しの人生を今の時代にやったとしたら、どのような人間ができあがるのか、実験として行動した人間がいるだろうか。テレビという薬をのまない生活である(薬という毒物)。そして、たしかに、昔は笑いより悲しみが受けたようだ。ましてや、田舎向けの巡回映画などは、お涙ちょうだい物に感動した。「ハンカチを三枚用意して下さい」なんていうコピーがあったりした。「ヨシ!!
 思いきり泣こう」という娯楽映画だった。
 〈さて、最近のテレビでは座談会形式やゲーム形式の番組が多く、そこに登場する司会者たちが巧みに聴衆の笑いを誘うように話を展開させる。(略)聴衆を意識して笑いを生む公式、技術のようなものを彼らは十分に修得しているように見える。テレビを見て育った人たちは、いつのまにか観察学習によって、笑いの技法を身につけているのだろう。(略)ただし、気になることがある。それは彼らの笑いには誰かをこき下ろすような笑いが多いことである。〉(本書より)
 みんな共通した全国的なテレビ笑いであるとでもいえるのだろうか。テレビをちょっと遠ざかると、テレビ笑いがわからなくなってしまう。すると、笑いの時間をよめない者になってしまうという。だから今は、テレビと笑いは切りはなせないものであり、たえずテレビから今の笑いを学習しなければならないだろう。
 〈上野行良氏によれば、ユーモアは三種類にわけられるという。第一は何かを攻撃するための「攻撃的ユーモア」。それは風刺、ブラック・ユーモア、皮肉、からかい、自虐などが相当する。第二は陽気な雰囲気や気分をつくって楽しむための「遊戯的ユーモア」。これはだじゃれなどの言葉遊び、ありふれた日常のエピソード、ドタバタなどが該当する。さらに第三は励ましたり、許したり、心を落ち着けるための「支援的ユーモア」である。人をなぐさめるために、自分の失敗を面白おかしく語ったり、気がめいるようなときでもユーモアで自分を励ましたりする場合である(詫摩武俊・鈴木乙史・清水弘司・松井豊編「性格と対人関係」ブレーン出版)〉(本書より)
 笑うことは健康によいという。では、悲しみはどーなんだろうか。悲しみの文化というものもある。
 〈「ユーモアの源泉は哀愁である」というマーク・トウェインの言葉がある。〉(本書より)
 結局は大口を開けて、馬鹿笑いするのが一番幸せかもしれない。







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