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評者◆伊達政保
夢と笑いと現実を茶の間に持ち込み、若者を街頭へと導き出していったのだ──『昭和40年代ヒットパレード~夢と笑いのお茶の間から~』CD六枚セットが発売
No.2879 ・ 2008年07月26日




 ほう、とうとうこんなものが出てきたか。テレビの通販で、『昭和40年代ヒット・パレード~夢と笑いのお茶の間から~』CD6枚組だ。前に、昭和30年代ブームに便乗してCDセット『昭和30年代』(歌謡曲のオムニバス)を発売し、次は昭和40年代だと安易に企画されたものだろうと思っていた。しかし、サブタイトルに「夢と笑いのお茶の間から」とあるように、昭和40年代に茶の間の中心となった、テレビに軸を据えた選曲となっていたのだ。
 よって歌の無いインストゥルメンタルだけの、TVドラマ「時間ですよ」のテーマや「ザ・ガードマン」のテーマ、一世を風靡した「11PM」のテーマも収録されているし、当然人気番組の主題歌も収録されている。子供向けでは「ウルトラマンの歌」や「サインはV」等、時代劇では「銭形平次」、今も続く水戸黄門の「ああ人生に涙あり」、「子連れ狼」、青春ドラマ「これが青春だ」、朝の連ドラ「おはなはん」の歌、圧倒的視聴率でお化け番組と言われた「ありがとう」の歌、サスペンスでは「キーハンター」より「非情のライセンス」、美空ひばりの「柔」だってTVドラマの主題歌だったのだ。
 テレビと来ればCMも忘れちゃいけない。現在はタイアップ曲が殆どだが、当時のオリジナルCM曲、サントリーや大関などは現在でも使用され、誰でも耳にしているはずだ。その他フォークやGS(グループ・サウンズ)、和製ポップス(現在のJポップ)など、その時代にブームを呼び起こした曲が並んでいる。この頃全盛期を迎えた演歌も収められているが、どういうわけか森進一と青江三奈の二人が入ってはいない。版権の問題だろうか。しかし、こうして聴き直してみると、よくこれだけ種々雑多な表現がこの時代一斉に噴出し、そしてヒットしたものだと思う。歌は世に連れるということか。最後の曲が「昭和枯れすすき」。企画者が現在のワーキング・プア時代をアナロジーしたに違いない。選曲だけでなく、この時代の資料や解説もそれなりに充実したCDセットとなっている。
 昭和40年代、テレビを通してお茶の間に、あらゆる情報や出来事がダイレクトに流れ込んできた。ベトナム戦争、ビートルズ、フーテン族、三派全学連、原子力空母、三里塚、フランス五月革命、アングラ、大学闘争、新宿騒乱。東大安田講堂の攻防戦や連合赤軍あさま山荘事件の生中継は、長時間視聴者を釘付けにした。「ただの現在にすぎない」と批判されたテレビではあるが、夢と笑いと現実を茶の間に持ち込み、オイラをも含めた多くの若者を、あらゆる意味で、街へそして街頭へと導き出していったことには間違いない。







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