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評者◆秋竜山
神さまでてこーい、の巻
No.2871 ・ 2008年05月31日




 最相葉月監修『星新一 空想工房へようこそ』(新潮社とんぼの本、本体一三〇〇円)がいい。没後一〇年となるが、どのようにとらえたらよいのだろうか。「まるで、うそのようだ」としか考えられない。一〇〇一編のショートショートが達成された時、「そんなこといったって、その内に、また続きをはじめるに決まっているよ。わかってんだから……」と、私は思っていたし、キタイもしていた。そして、これからも、没後何年が続いていくのだろう。没後一〇〇年なんて時には、どのような世の中になっているのだろうか。「没後一〇〇年後の僕」なんてショートショートを星新一さんに書いてほしかった。本書で面白かったのは、〈星流ショートショートのレシピ〉だ。
 〈星新一が去り、膨大な数の「創作の跡」が残された。〉(本書より)
 清書前の下書きなどが写真で紹介されている。このページをみただけで、「ウーン。わかった」と、すべてが解明できたようなサッカクをしてしまう。作品が単純だからこそ、下書きは複雑であればあるほど、「やっぱり、ただものではなかった」と、思えてくる。
 〈「ほかの作家の場合はどうなのか知らないが、小説を書くのがこんなに苦しい作業とは、予想もしていなかった」(「創作の経路」――「星新一の作品集、Ⅷ」所収)。ショートショートは、原稿用紙十数枚にも満たない文字量の中に、完結する小宇宙を作り上げなければならない。そのために、まず「私の求めるのはある種のシチュエーション、つまり状況である。異様な出だし」(「物体など」――「できそこない博物館」所収 新潮文庫)。作家はこれを考え出さなければならなかった。〉(本書より)
 ショートショートという言葉が活字にあらわれはじめた頃、「なんのことだ?」と誰もわからなかった。なんであるか説明するよりも、星新一の作品を読め!! で、すんだ。一編の量が短かいから、すぐ読み終えて「こーいうものなのか」と、すぐわかったものだ。流行した時、みんな星新一になった。もちろん、本物の星新一になりきれるものではない。アイデア勝負。
 〈ただ目をつむりうなっても、何も出てこない。「そこでどうするかというと、机の上の二百字詰めの原稿用紙を裏がえしにしてひろげる。むかしは、四百字詰めの半分に切って使った。つまり、大きめの白いメモ用紙。/そこへ、思いつくまま、なにかを書く」(同前)一つの発想を得るために、どれだけの時間を計算したり、待ったりしたらよいのか、本人にもわからない。神だけがしっている。だからといって、「だいぶの時間悩んでいるようだから、ボツボツ、インスピレーションをあたえてあげるとするか」なんて、そんな人の好い神さまなんていないようだ。でも〈「やがて神かかり状態がおとずれてくる」〉(同前)
 と、いう。やっぱり、神は存在するのだ!! と、その時感ずるのである。……なんて、これは私が思うことである。私の場合は、ナンセンス・マンガであるが、同じようなことを繰り返しながら、マンガをうみ出している。神はなにもいわない。だからいいのであって、もし、「お前は、もーやめろ!!」なんていわれたら、どーしましょう。下書きをみるのは神とのたたかいをみるようなたのしさがあるものだ。








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