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評者◆秋竜山
ああ米原万里さまっ!、の巻
米原万里の「愛の法則」
米原万里
No.2869 ・ 2008年05月17日




 米原万里『米原万里の「愛の法則」』(集英社新書、本体六六〇円)を読む。四つの講演を活字にして一冊。本書では第四章からなる。〈第一章 愛の法則〉〈第二章 国際化とグローバリゼーションのあいだ〉〈第三章 理解と誤解のあいだ‐通訳の限界と可能性〉〈第四章 通訳と翻訳の違い〉。〈本書に寄せて〉と〈池田清彦さんが〉書いている。
 〈米原万里の体に卵巣がんが見つかったのは、確か二〇〇三年の秋だったと思う。摘出手術後しばらくは元気だと言っていたのだが、二〇〇五年の二月頃に転移がわかり、以後すさまじい闘病生活となった。(略)本書はそんな時期の講演をまとめたものだ。独りで文章に呻吟している時と違って、一般聴衆を前にしての講演は、転移がんの苦痛を一瞬だけ忘れることができた時間だったのであろう。本書には、米原の往年の好奇心とサービス精神があふれている。〉
 苦しい闘病生活をおして、こんなに面白い講演をしてしまうなんて、こっちとしては笑いたくても笑っては申しわけないような気がしてくる。でも、笑わなくては申しわけないような。本書では、かなり笑わされてしまった。
 〈世界最強の国一辺倒の日本――もともと日本と日本文化には、その時々に世界最強と思える国、イコール世界最高の文化を持っていると思い込んで、その国の文化を熱烈に、ある意味では無批判に無節操に取り入れる癖があるんですけど〉〈それは、最初は中国でした。〉〈江戸末期になると(略)最高の文化はオランダとオランダ語〉〈これが第二次世界大戦後になると、アメリカ一辺倒になります。〉
 たしかにそーだ。よくテレビのコメンテーターなどが、「外国では」「外国では」と、外国がよくて日本が駄目なようなことを連発させるが、「日本人の悪いクセ」のようだ。
 〈日本は世界というものをとらえるときに、ほんとうの世界ではなくて、日本にとって身近な世界、最強の国を一心不乱に取り入れようとする傾向があることがはっきりしています。〉(本書より)
 つまり、日本は外国に弱いということだ。例えば、これは笑えてしまうのは、
 〈小渕さんが首相のとき、二〇〇〇年一月に、「二十一世紀日本の構想」懇談会というのが、日本有数の知識人を集めて行われました。(略)構想の大筋は、「社会人になるまで、日本人全員が実用英語を習得し、刊行物はすべて和英併記にして、将来的には英語を第二公用語にしたい」と提言しています。これには私の外国の友人たちはみんなぶったまげていましたけれども、〉〈明治時代に森有礼という人がいました。(略)日本語廃止、英語採用論というのをぶち上げました。(略)とにかく日本語を捨てて、英語にすると主張しているのです。〉〈北一輝という国家社会主義者がいますけれども、この人も一九一九年に「国家改造案原理大網」というのを発表していまして、そこでもやはり日本語を捨てろと主張しています。「日本語は不便な言葉であるから、将来はエスペラント語を第一の公用語にしろ」、〉〈志賀直哉が、「戦争に負けたのは日本の言葉がすぐれていなかったからだ。(略)世界でいちばん美しいフランス語を話すべきだ」。〉
 そういえば大阪弁を日本の標準語にすべきだという友人がいたが、彼は大阪出身であった。







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