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評者◆秋竜山
マイペースでいきましょう
No.2864 ・ 2008年04月05日




 病気になりたくてなっている人は、ひとりもいないだろう(こんな世の中だからいたとしても不思議はないけど)。細い声でつぶやきタメ息をつく。「どーして、俺は、こんな病気になってしまったんだろう」と、ね。正直な気持である。こんな正直な気持が他にあろうか。斎藤茂太『病気になりたくなかったら「急がない」「怒らない」』(新講社、本体一三〇〇円)を読む。「怒らない」は、わかるが、「急がない」とはどういうことか。本書はこれが売りだから、ここでいってしまうわけにはいかない。今、数多くの健康本が書店に並んでいる。病気になる前の対策、なってしまったらという対策。いずれにせよ、病気本は、すたれることはないだろう。病気になりたくない本であるが、そのうちに病気になりたい本なんてのが書店に並べられたりするかもしれない(こんな世の中だから、あったとしても不思議はない)。雨のふる日は天気が悪い、のだが、病気になる時は健康が悪い、というべきだろう。その健康本の中身、つまり内容の中に必ずといってよいのが(これを入れなかったら健康本といえないだろう)、笑いである。笑いは健康によいということだ。私はマンガを描いている手前、笑いということでは神経がピリピリしている(このピリピリは健康によくないみたいだけど)。本書も、笑いを取り扱っている。〈よく笑う人には、病気が近づかない〉という見出しで、さまざまな例をあげている。よく笑う人に病気が近づくなんてことは、ありえないだろう。例として〈病気は、笑って治すのがよい〉というのがある。
 〈「悲しみは地上の病、笑いは天の妙薬」という格言がイギリスにある。(略)もちろんまだ笑いによる病気の治療効果についての研究は不明な点も多々あるし、道半ばといったところなのだろうが、病気からくる不快感や痛みや、思うようにならない体にイライラムカムカとした感情で気持ちを暗くしているよりは、ここはいっときであっても自分が病気であることを忘れ、能天気に笑っているほうが、病状の回復にはよいだろう。病は気から、である。健康も気から、だ。〉(本書より)
 アララ……。病気と笑いの関係って、この程度というかレベルのものであったのか(ちょっと笑えないぞ)。本書で肝心なページは、
 〈ところで、ある人にいわせれば、嫌われ者ほど病気にならない。嫌われ者ほど長生きする、という。その理由は、こうだそうだ。嫌われ者は、
●人から、どう思われようと気にしない。
●自分にできないことは、やらない。
●自分の世界、自分のしっかりした価値観をもっている。
「嫌われ者」といってしまうと身も蓋もないのだが、好意的に受け取って、こういい直すこともできそうだ。つまり「マイペースな人」と。〉(本書より)
 わかったことは、マイペースな人間になれば、健康にもよいし、病気にもかからないし、長生きするってことだ。いい人は長生きできない。マイペースな人間でないからだ。「マイペースに生きるには」なんて本が出ないかしら。長生きしたい人は皆読もうとするだろう。まてよ〓 すでにマイペースをつらぬいている人はそんな本なんか読まないだろう。マイペースなんだから。








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