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評者◆秋竜山
連載第966回 わかった気がした、の巻
No.2863 ・ 2008年03月22日




 やたらと専門用語が出てくる。専門用語というものは、わかる人にはこの上ないわかりやすさがあるだろうが、わからない人には、サッパリというかチンプンカンプン。専門用語にもわかっているつもりでいるが、実のところ、まったくわかっていないかとがあったりするものだ。「ハッと気がつくチンプンカンプン」というわけだ。専門用語などまったく出てこないものでも、わからないものがある。何をいっているのかわからない。つまり、本というものは読んで一〇〇パーセントわかるということはありえないだろう。いったい何パーセントぐらいわかったら、ナットクできるか。それもよくわからない。中川人司『宇宙授業』(サンクチュアリ出版、本体一四〇〇円)を読む。
 〈この本には、宇宙のことがとてもわかりやすく書かれている。まるで、知り合いの家の裏庭の様子を聞いているかのように、気楽に読んでいつの間にか知識が身に付いている。このような文章は、よほど宇宙のことをよく知っていなければ、書けるものではない。長年宇宙に関わるお仕事をされてきた中川さんだからこそできたことだろう。〉(解説‐茂木健一郎)
 一つのテーマが見開き2ページぐらいの文章の長さだから、わかりやすい文章であったら、これでわからなかったら、どーかしている。宇宙には関心はある。が、そんなことを考えるヒマはないよ!! と、いわれても文句はいえない。これが、政治のことだったりすると、「あなた、そんな無責任なことでいいんですか!! 」なんて、言っている本人も何を言っているのかわからないものだ。〈宇宙人はいますか?〉という項目がある。宇宙人どころではない。地球人のことを考えるだけでせい一ぱいだ。とは、いうものの関心はないことはない。
 〈宇宙人はまだ見つかっていません。「すでに宇宙人がUFOで地球にきている」とか、「NASAが宇宙人の死体をかくしている」とか、過去に「宇宙人を捕まえた」というのはすべて誤りです。まだ宇宙人は地球にきていないし、宇宙のどこかに宇宙人がいるという証拠は見つかっていません。地球以外にどんな生物も(微生物さえも)まだ見つかっていません。しかし、宇宙人がいないという証拠もありません。〉(本書より)
 こういう文章を読むとホッとする。もうこれだけで、宇宙についてのすべてを終ってもよいくらいの内容に思えてくるものだ。安心して生活できるというものだ。〈見ているものは、すでに古い〉という項目がある。
 〈太陽の光が地球に届くまで8分間もかかります。つまり、ふだん見ている太陽は「8分前の太陽」、もし太陽が爆発したとしても、それがわかるのは8分後のことです。〉〈べつに星や銀河でなくても窓の外の景色や、部屋の壁にかかっているカレンダーなど、今あなたが見ているものは、すべて過去のものです。物体を反射した「光」が、後からおくれてあなたの目に届いて見えているのです。〉(本書より)
 そーだったのか。あなたの今みえている美しい顔も8分前の顔であったわけですね。そして、8分後にみえる顔が、今みている」顔ということになるわけですね。わかったようでわからない。8分前、と8分後。8分後のために今、何をすべきか…だ。







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