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評者◆秋竜山
連載第965回 老人に席をゆずる、の巻
No.2862 ・ 2008年03月15日




 なぜ本。は「なぜ?」うけるのか。幼児が母親に「なぜ?なぜ?」といって、ぶつけるようなものか。しかし、「なぜ」は無視できない。それを知りたい!! ものがある。だから、我ら大林宣彦の新刊本『なぜ若者は老人に席を譲らなくなったのか』(幻冬舎新書、本体七六〇円)の「なぜ?」も手にとらないわけにはいかないだろう。いっそのこと大林宣彦監督で同名の映画を製作してほしいものだ。「なぜ電車の席に老人用があるのか」あたりに興味がある。昔はそんな特別な席などなかった。今、ある。なぜ? なんだろうか。若者が老人に席をゆずらなくなったから席を特設したのか、それとも、若者に老人になどに席をゆずることのないように、あのような席をもうけたのか。そのへんのところを知りたいものだ。別の意見もあったりするだろう。〈本書は、大林宣彦にライター田中裕が取材し、構成したものです。〉とある。
 〈老人に席を譲らない若者を責めるのは間違っている。責任は、長く生きることの尊さを教えてこなかったぼくら大人にある。戦前は、「心」がどうあるべきかを教えることのできる大人が大勢いた。しかし戦後、豊かで便利な生活を目指すあまり、誰もがモノやカネに執着し、結果、美しい日本の風習や風景がどんどん消えた。ぼくらはそれを嘆くが、まさに自業自得。今こそ、古き良き文化や知恵を若者や子供に伝える最後のチャンスだ。それができないぼくらに、もはや存在価値はない。〉
 裏表紙に書かれたコメントであるが、ドキリとするものがある。〈これを若者に言えないのなら、ぼくらが生きている価値はない。〉とオビでも叫んでいる。さあ、若者よ!!どーしましょう。老人を座らせ、若者に立たせるということは昔はそうだった。それが当り前のことだった。なんの不思議もなかったから、私たちは若い時そうしてきた。その当時のマンガに、若者がせっかく席がとれて一息ついたところへ、老人がその若者の前に立った。というのがあった。マンガとしては、寝たふりをすることだろう。いや、実際にそーいうこともあった。私など何度となくタヌキネイリをきめ込んだものだ。同情は若者にむけられるべきだろう。よりによって、この老人は、別の若者の前に立てばいいのに。不運な若者である。老人が席をゆずってもらうのが当然の如く思っているというのも、みっともないもののようにも思えてくる。「それをいっちゃァ、おしまいだ!!」とも受けとられそうだ。電車にのって、若者に席をゆずられるほど、うれしいものはない。と、同じくらい、さびしいものはない。「俺も、そんな年になったのか…」と、思いつつ、世の老人たちは電車の席に座っている。そんなことを若者たちは感じているのだろうか。まず、わからないだろう。老人の心の中までみぬく若者なんかいるわけがない。と、老人は思ってよいだろう。昔の老人は若者に席をゆずられるのにためらいもなかった。今の老人は、とっても恥かしい思いを持ってしまうってのはどーいうわけだろうか。







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