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評者◆矢野久美子 評
身体の内と外とを行き来する 痕跡としての言葉
到来する沖縄――沖縄表象批判論
新城郁夫 著
インパクト出版会
No.2861 ・ 2008年03月08日




「僕である僕とは、僕であるより外には仕方のない僕なのか」(山之口獏「存在」)。こうした問いを抱くことへの恐れ。「自画像」を描く困難と向き合ったり、あるいは自分を見失い、ほかのあり方へと身を乗り出したりすることは、たしかに容易な営為ではないだろう。もしかするとこの恐怖感があるから、ひとは自分の内外の声や声なき声を無視し、主体にしがみつき、安定を保とうとするのかもしれない。それが私たちから感受性と想像力を奪い、他者や自分に対する暴力を容認することになるとしても。
 しかし、本書を読み終えた後、こうした恐れは身をひそめ、「自画像」を「静かに見失う」ことを選ぶ著者の身ぶりについての強い印象が残る。そして、見知らぬ他者の言葉に身をさらし、「自分」や「自画像」を見失うことも悪くない、そのほうが自由でもありうると感じるのだ。それは、著者自身が、「国家」を含む「僕」への集積回路を断ち切り、異質なものや失われた声、他者の「痛み」に身をさらし、その「痕跡」を自らの身体を通して読者に伝えているからにほかならない。痕跡としての言葉が身体の内と外とを行き来するものとなって、読者としての私にも到来した、というのが率直な感想である。
 「沖縄表象批判論」である本書は、二〇〇三年以降著者が書きついできた諸論...







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