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評者◆秋竜山
連載第960回 「談志が死んだ」なんて言わせない、の巻
No.2857 ・ 2008年02月09日




 〈ここに写っている人たち、つまり噺家、これが東京の噺家の全て、といっていい。〉(まえがき)という本。立川談志/写真・田島謹之助『談志絶倒昭和落語家伝』(大和書房、本体二六〇〇円)が、これ。
 〈ここに写った噺家、この人たちが戦後、〝落語ブーム〟とまでいわせた時代も含めて、私たちに落語を伝えてくれた。伝授してくれたのである。で、この時代を背景に撮った写真、撮りまくった田島謹之助さん。この人もその頃、これまた奇人扱いされた部分も多々あったろう。〉(まえがき)
 東京の落語界の全てといえる、という。たしか戦後の〝落語ブーム〟では、ラジオ時代であり、まだテレビなんてものを知らない時代だった。ラジオの電波が届く限り日本中のどんな山奥でも、茶の間の茶ダンスの上などに置かれてある、なんとからスーパーとかいうシンクウ管のラジオでガーガーピーピーの奥から聞えてくる落語に耳をすませて聞き、家族で笑い所は一緒で、大笑いしたものだった。私などは子供であったからその落語家がどのような顔をしているかわからない。本当の声だけの落語であり、東京から遠くはるばる目にみえない電波によっての声だけの落語だった。あの時代のラジオからの笑いと今のテレビによる笑いとでは、やっぱり違うようにも思える。本書では、〈六代目三遊亭円生、三代目春風亭柳好、三代目桂三木助、八代目桂文楽、六代目春風亭柳橋、桂小文治、五代目古今亭今輔、八代目三遊亭可楽、四代目三遊亭円馬、四代目三遊亭円遊、二代目桂枝太郎、七代目春風亭小柳枝、昔々亭桃太郎、林家三平〉と続くわけだが、みんな若い。こんな若い時があったんだなァとしみじみとしてくる。このさい続けて全部とり上げさせていただく。〈十代目金原亭馬生、三代目柳家小せん、七代目橘家円蔵、九代目翁家さん馬、三遊亭百生、二代目桂右女助、八代目春風亭柳枝、八代目林家正蔵、二代目三遊亭円歌、八代目桂文治、五代目古今亭志ん生、五代目柳家小さん〉ものすごいメンバーだ。それぞれの噺家の顔が浮んでこないとしても、声が聞えてくるとしたら、それだけで大いばりできるだろう。あの、ラジオの時代に聞いた時、あんなにおかしくて大笑いしたのに、テレビの時代になった時、なぜか、あんな笑った笑いがこみ上げてこなかった。同じ落語家でありながら、これはどーいうわけなんだろうか。今だにわからないでいる。
 〈〝落語とは何か〟が解ったのは六十代だった。つまり遅咲きだ。青の時代が長かった。それでよかった。それで今日があり、満足である。〉(あとがき)
 談志ほどの大天才が六十代で落語とは何か、がわかったといういいかたをされると、みんな、落語とは何か、がわからない!! ということになってしまうのではなかろうか。
 〈久しぶりに書いた。疲れた。もう駄ァ目。立川談志、終わりに近い。いや、もう終ったか。色川武大兄イの言った如く、「立川談志、六十代を頂点と考えているはずだ」云々……。その通りでした。〉(あとがき)
 読んでみたいねぇ。立川談志、百歳の本。いったいどのようなことを書くだろうか。やっぱり、談志は、喋っても、書いても、座っても談志だということになるだろう。談志が喋るとすべて落語であるところがすごい。







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