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評者◆秋竜山
連載第958回 困った人間どもだ、の巻
No.2855 ・ 2008年01月26日




 神は漫画で存在している。漫画に出てくる神さまの姿形をみれば、これぞ神であると誰も文句はいわないはずだ。文句をいわせないほど漫画の神さまは定着し有名だ。誰も本物の神を目撃したものはいない。のにもかかわらず、漫画の神さまを認めてしまうということは人間のチエでもあろう。漫画の神は万国共通のスタイルをしている。だから、そのスタイルで描けば、どこの国でも神として受け入れられる。一種の記号のような存在でもある。漫画に出てくる神は、人間以上に人間的である。神は自分の姿に似せて人間を創造されたとか。井沢元彦『仏教・神道・儒教集中講座』(徳間文庫、五五二円)で、
 〈神道は、非常にわかりにくいものです。なぜわかりにくいのかというと、これは本書で扱う仏教や儒教にも当てはまることなのですが、これを一冊読めば、神道のことがわかる、という聖典がないからです。キリスト教の場合は、「聖書」があります。聖書を一冊読めば、キリスト教が何を教義とし、どんな神を信じているのかがだいたいわかります。しかし神道には、そういうものはありません。なぜないのでしょう。理由の一つは、仏教と同じで、さまざまな考え方を包含していることがあります。もう一つは、私がそもそもこのシリーズを書こうと思った動機にもなっているのですが、たいていの日本人が、自分たちの国の宗教的伝統をほとんど把握していないからです。これは何も一般人に限ったことではありません。実は、学者と呼ばれる人たちでも、ほとんどの人が知りません。〉(本書より)
 日本には八百万の神々といわれ、数えきれないほどの神さまがいる。どのような姿形をしているか漫画に描くとしたら、まず描ききれないだろう。そんなに存在するはずなのに世界では神としてわかってくれないだろう。日本の神は日本人にしか通用しないようです。江戸川柳にあるように、どうして地獄絵には、外国人が出てこないで日本人ばかりなんだ? というのに似ている。国学の中興の祖ともいわれる本居宣長は、
 〈神を次のような言葉で定義しています。「何にまれ世の尋常ならずすぐれたる特のありてかしこきもの」つまり、神というのは、「必ずしも人間でなくてもよく、普通では見られないきわめてすぐれた特質を持っているもの」だと言うのです。この場合の「すぐれた」というのは、必ずしもほかよりもという意味ではありません。卓越しているものであれば悪いことでもいいのです。ですからこれは、むしろ「異常な」と言ったほうが正しいかもしれません。(略)ですから当然、神の中には、いい神もあれば悪い神もあるし、〉(本書より)
 そーいわれれば、そーだったよなァ!! と思い出した。私の子供の頃は正月になると、親父が家中の神さまに、おかざりをかざり、神酒をあげて、お燈明をつけたりしたものだ。家中いたる所に神さまがいた。便所の中にまで神さまがいることは正月になると思い知らされたものであった。もちろんどのような姿形をしているのか見たこともなかったのであるが、悪いことをするとバチがあたるといわれた。近年、お正月に、そのような家中の神さまに何もしなくなってしまった。神さまも時代によって祭られたり祭られなかったり。「困った人間どもだ」と思っているかもしれない。







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