シリーズ「評伝・日本の経済思想」（全一五巻・日本経済評論社）の刊行が始まった。人物評伝や思想家列伝などはこれまでにも存在するが、経済思想に焦点を当てたものでは、本邦初めての本格的伝記シリーズである。刊行開始を機に、監修者の早稲田大学政治経済学術院の川口浩氏に、本シリーズのねらいや企画意図、経済思想史の学問的現状などをめぐって話をうかがった。（編集部）

　日本経済思想史と
　経済学史のはざまで
　――川口さんは編著『日本の経済思想世界――「十九世紀」の企業者・政策者・知識人』（日本経済評論社、二〇〇四年）のなかで、日本経済思想史という学問分野は、社会経済史学や経済学史、日本思想史に挟まれて、十分な市民権を得ているとはいいがたいと書かれています。シリーズ「評伝・日本の経済思想」には、そうした現状を打ち破る狙いが込められているそうですね。
川口　日本経済思想史という分野は、たしかにおっしゃるとおり、市民権を得ていないと思います。それにはいろいろな理由があるのですが、日本経済思想史という講座を置いている大学が、日本では数校しかないことが、現状をよく表しています。若い人も、そういう学問があることを知らないし、さらにそれを志す人もほとんどいない。授業がないということは、学界でも市民権がな...






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