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評者◆秋竜山
連載第956回 日本の知らないしきたり、の巻
No.2853 ・ 2008年01月12日




 書店で飯倉晴武監修『日本人礼儀作法のしきたり』(青春出版社、本体七〇〇円)を手にして、パラパラ。〈はじめに〉の出だしの部分をチラチラ。
 〈日常生活における「礼儀作法」とは、日本人が長い歴史の中で、いろいろな生活環境に対応しながら培ってきた人間関係の知恵といえます。ただ現在では、形骸化しているものも少なくありません。たとえば、
・訪問の際、手土産を玄関先で渡してはいけない
・和室に入る前には必ず「咳」をする
・割り箸は、縦にして割ってはいけない
・神社に参詣する際、神前で鈴を鳴らす
・中秋の名月にはススキを供える
……などのしきたりは、形式的には知っていたとしても、そこに込められた〝意味〟を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。〉(はじめに)
 たとえば、のこの項目でどれも知っていなかった。〈和室に入る前には必ず「咳」をする〉には、驚きの知らなさであった。いろいろ理由を考えてみる。わからなかった。本書に答えがのっている。と、思ったら、これだけでもこの本を買うだけの価値があると思った。知って後で仲間に知ったかぶりをするのもいい。もちろん、本書では理由が述べられているが、礼儀作法として、その答えをここで述べるわけにはいかないだろう。知りたかったら書店へ飛んで本書を買うべきだろう。〈割り箸は、縦にして割ってはいけない〉というのは、どーなのか。これも考えこんでしまう。ナゼ、割り箸を、縦にして割ってはいけないのか。そんな決まりでもあるのか。そんなこと誰が決めたんだ、なんて力む前、本書で答えているとーりに実際にやってみる。
 〈割り箸を割るときは、箸を横に持ち、ひざの上で上下の方向へ広げるようにして静かに割ります。卓上で割ると、食器類にぶつけるおそれもあります。箸を縦にして左右に割るのも、仏様の膳に箸を立てることを連想させるというので、やってはいけないこととされています。ましてや割った箸をこすり合わせるのも絶対に「ノー」です。〉(本書より)
 やってしまうものだ。箸のこすり合わせというのは、むしろ、やるべきものだとさえ思っていたくらいだ。不作法も知らなかったら不作法とは気づかない当り前のことである。知ってはじめて不作法であることがわかる。〈和菓子をいただく──楊枝の上手な使い方〉という項目がある。
 〈串に刺した団子などは、打ちとけた仲間同士なら串を持ってかぶりついてもかまいませんが、客席の場合は串から順々に楊枝を使い、引き抜いてからいただくようにします。〉(本書より)
 知らなかった。これからは、気をつけて串団子をいただくことにしよう。あの時、たしか、かぶりついて口にした。おいしいといって、二本も食べてしまった。「なんだ、この食べかたは」なんて腹の中で笑っていたかもしれない。考えてみれば、毎日がそのような恥の中で生活をおくっているのかもしれない。日本人であることを忘れているというか、気づかないというべきか。本格的な日本人をやるとしたら、日本学の教育からということだ。今からでも遅くはないだろう……と思うのだが……。







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