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評者◆秋竜山
連載第946回 シャッターを押す勇気、の巻
No.2843 ・ 2007年10月27日




来年度の手帳の季節。書店には新品の手帳が並んでいる。もう、今年もそんな時期になった。鬼も来年の手帳を買うだろう。私には手帳をつける才能が無いから。メモ下手であるということだ。いろんな人が手帳にメモしている姿が頭に浮かぶ。マンガチックだ。マンガで〈手帳をつける時〉なんて題名で様々な手帳人間を描き出したら面白いかもしれない。手帳にふりまわされている人間がいたりするかもしれない。荒木経惟『アラーキー語録。人間、泣かなくちゃ』(主婦と生活社、本体一二〇〇円)アラーキーという呼び名で有名なカメラマンによる語録であるから、いいこと言ってる、なるほど!!
なんて感心させられる本である。語録の一冊本のミリョクは、数秒間の内にサッと読んで、サッとわかり、ウム!!
とうなる。天才は天才の語録をうみ、凡才は凡才の語録をうむ。語録というものは人間性がモロに出てしまうから、だからこそムズカシーのだ。本書のアラーキーの語録は、一流カメラマンとしての一流の語録集である。アラーキーらしいと思えたらしめたものだろう。
〈こんなこと言ったかなぁ、書いたかなぁ?(言いましたとも、書きましたとも!)え~~~、ホント?(略)いやぁ~、いいじゃない、これ。いいこと書いてあるねぇ。ただいま、(「アラーキー語録人間、泣かなくちゃ。」で)勉強中、ハハハハハハハハハ〉(本書――まえがきより)
昔、カメラマンって、いいなァ!!と、思ったことがあった。あのパチリパチリと鳴りひびくシャッター音。たった一枚の写真を撮るために、素人には気の遠くなるような枚数を撮りまくる。シャッターを押しまくる。その中からの一枚である。だから、その分だけその一枚が貴重なのかしら。あれだけ撮ったんだから一枚ぐらいは、……なんてことも。自分の漫画のことを考えてみる。写真のようにパチリパチリと連続的にシャッターを押して、その中の一枚というわけにはいかない。一枚物を描く時は一枚のケント紙に一枚きりの漫画を描くだけだ。写真のように何枚も描いて、その中から気にいったのを一枚というわけにはいかない。もし、二十枚の同じ漫画を描いて、その中から選ぶとしても、最初に描いた一枚目の漫画を越えるものはないだろう。つまり後に描いた作品ははじめっからムダであることがわかっているってことだ。なんて、ことを、昔、書いたことがあった。今になって思えることは、これは正論であるということである。それにカメラマンのシャッターの連続押しはムダ押しではなく、第一にいえることは、一枚の写真をほしいために一回きり「パチリ」とやって、「ハイ!! 終わりました」では心もとないというか、気になるだろう。果たして今押した一枚がうつっているかいないのか。もし、うつっていなかったら、後でどーしましょう。なんてことになりかねない(これはあくまでも素人考えであることは私も認めるところである)。
〈いつでもどこでも、しょっちゅう写真を撮っている。ずーっと見つめたいってことだけどね。〉(本書より)
そーか。写真を撮る極意というのは〈ずーっと見つめたいってことだけどね。〉ということか。シャッターを押す勇気かもしれない。







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