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評者◆秋竜山
愛情のある「バカッチョ」、の巻
No.3441 ・ 2020年03月28日




■バカにつける薬など、バカみたいな話である。その薬をつけると、利口になるという、これとてバカげた空想だ。和田秀樹『バカの人――その傾向と対策』(ゴマブックス、本体一二〇〇円)では、
 〈「バカ」の種類を徹底解明!もう「バカの人」に悩まされない!〉(本書のキャッチフレーズ)
 人間はバカであるということは、わかっているが、人間以外の動物たちはどうなんだろうか。猿はバカか。犬はバカか。熊はバカか。馬はバカか。アリはバカか。モグラはバカか。バカであるかないかは、人間の眼で決めることである。バカである人間に動物たちをバカであるかないか決められるだろうか。「人間なんかに決めてほしくない!!」と、動物たちはいうかもしれない。
 人間だけが「笑う」と、いう。動物たちは笑わない。そして、「バカ」は、人間だけであるということである。
 〈大きな夢物語ばかり語っている人がいます。現実を見ずに、上ばかり見ている人がいます。「大風呂敷バカ」の人たちです。この人たちは、大きなことばかり言う割に、行動がまるで伴っていません。ですから、永遠に夢がかなうことはありません。もちろん、成功することもありません。ですから、そのギャップに気付かないまま、日々大きなことを言い続け、一生懸命に努力している人をバカにするフシまで見せます。〉(本書より)
 人間はバカであることはわかっているにもかかわらず、相手にバカといわれると、モーレツに怒る。「バカとはなんだ」「バカだからバカなんだ」などといったりする。バカがバカがという。バカといわれると怒りだすのはなぜだろうか。一番マトをいているではないか。バカにバカといわれたから腹がたつのだろうか。
 かつて、「バカヤロー」と、いって、国会を解散させた総理大臣がいた。たかがバカヤローであり、されどバカヤローである。あの時、バカヤローといった総理大臣は、「バカヤロー、俺もバカヤローだけど」と、いうべきだったろう。そういっておけば、なんの問題はなかったろう。「俺もバカヤロー」に対し、「お前は、バカヤローだろうけど、俺はお前と違ってバカヤローではない」などというはずもなかろう。お互いに手をとりあって、「まったくだ、確かに、キミもボクもバカヤローだ」と、なるはずである。これはよい教訓とすべきだろう。相手だけをバカヤローといってはいけない。もし、いいたかったら、必ず自分もバカヤローであると、つけ加えるべきだろう。バカ同士の口ゲンカなどというものはそういうものであり、人間的であるともいえよう。
 私が若い頃、生まれ育った小さな村であったが、言葉の終わりに必ず、「この、バカが」と、いう言葉をつけ加えた。「なにいってんだよ、このバカが!!」と、いう具合である。そして、このバカが!! と、いわれて誰一人怒るものもなかった。私が大人になり、村へ帰った時、その話をお年寄りにした。すると、そーではないといわれた。「この、バカが!!」ではなく、その後に「バカッチョッ」と、いったというのである。そういえばそうであった。つまり、「バカッチョッ」には、相手に対する愛情が秘められているというのである。わかったような、わからんようなことだ。







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