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評者◆秋竜山
お経のメロディがいいね、の巻
No.3438 ・ 2020年03月07日




■うれしい時も、かなしい時も、自然と心からお経を唱えている。お経の文言はしらないが、お経と思えるメロディというか曲がある。浪曲でいうところの、〽何が何して、何とやら……を、湯の中でうなっているアレである。なんとも心よい気分である。それと、まったく同じなのが、間のびしたような経よみのメロディである。
 芝村央夫『いやでも物理が面白くなる』(講談社ブルーバックス、本体一一〇〇円)で、
 〈仏教についてほとんど何も知らない人でも「般若心経」という名前は知っているだろう。〉〈「般若心経」は全部で5000巻以上といわれる仏教の「経」の中で一般に最もよく知られた「経」である。〉(本書より)
 その昔、〽あーりがあたや、ありがたやー、という歌が大流行したことがあった。「経」とは、つまりそのものすばりの内容である。そして、その意味はなんなのかサッパリわからない上に、気持よいメロディによって、なんともいえぬ眠けをさそってくれる。よく、坊さんの唱えるお経にコックリコックリはじめて、「スミマセン」と、あやまったりするが、眠たくなるお経は、よいお経であり、眼がさえるお経は悪いお経というか下手なお経ということになる。
 〈「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」という有名な文句である。これを文字通りに訳せば「色は空に異ならず、空は色に異ならない。色は即ち空であり、空は即ち色である」ということになる。わかったようなわからないような、キツネにつままれたような気分にさせてくれる文句である。〉(本書より)
 わかったような、わからんような。それでいて、ありがたく感じさせてくれるのがお経の本質であるだろう。時には唱えている坊さんまでもが居眠りをはじめてしまうような雰囲気になってしまうこともある。お経が長いと、それにおち入りやすい。だからかしらないが、近年のお経は極端に短い。唱えはじめたかと思ったらもう終わっている。
 〈この場合、「色」は“形あるもの”“物質”の意味であり、森羅万象のすべてを指す。「空」を理解するのは簡単ではないが、一般的には“固定した実体のないもの”と解されている。“真空”の“空”と考えてよいだろう。つまり「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」は、簡単にいえば、「形があるもの(物質)には実体がなく、実体のないものが形があるもの(物質)である」ということである。私たちの日常的な感覚、あるいは常識には、いささか反する文句である。〉(本書より)
 子供の頃、田舎の知りあいの坊さんに「お経って、なんですか?」と、聞いたことがあった。「お経とは、お前が授業中に居眠りしていて、あの気持よい時と同じものだ」と、いわれ、これも、わかったようなわからんような答えであった。
 エロ本に、「色即是空」とは「女」のようなものであると書かれてあって、女をしらない時であったので、「女って、そんなものか」と、わかったような、わからんような気持になったものであった。つまり、「女」とは、マカ不思議な生き物であると、これまた、わかったようなわからんような解釈をしたものであった。そして、女とは、ありがたや、ありがたや、ということになる。その存在はひたすらありがたい。あらゆるお「経」も、経文はサッパリ意味はわからないが、お経のメロディがいい。浪曲での名調子と似ている。お「経」のメロディだけで充分ありがたいものである。







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