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評者◆秋竜山
ゴチャゴチャの江戸時代、の巻
No.3435 ・ 2020年02月15日
■日本史の謎検証委員会編『最新研究でここまでわかった 江戸時代 通説のウソ』(彩図社、本体九〇九円)を読むと、私の信じていた江戸時代というのは、みんなウソであったことになる。特別に江戸時代を専門的に勉強したわけではないが、考えられることは、江戸時代という時代に誰も行って見たわけではなく、江戸時代の空気を吸ったわけでもない。と、いうことは本当の江戸時代をいまの世の中のヒトでは、まったくわからないということだ。そんなヒトが江戸時代を語ったところで信ずるわけにはいかないのが道理だ。
本書を読むと、江戸時代はウソであったということが書かれてある。ウソといわれても、ホントといわれても信ずることができない。では、いったい江戸時代を、どーとらえればいいのか。私にとっての江戸時代とは映画や小説などから得た知識でしかない。子供の頃の東映時代劇であり、マンガや大衆小説など、つまりは、チャンバラ物である。そして、江戸時代を演ずるスクリーンの映画スターたちだ。 〈かつての時代劇では、権威を笠に着る武士と生活に困窮する庶民という二項対立が描かれることもあったが、本書を読んでいただくと、これが誤りであることがわかる。実際には、武士は時代を経ると為政者として配慮を示すようになっていたし、財力や政治力を背景に幕府の決定さえも覆す豪農もいた。そんな江戸時代の意外な真相を本書で楽しんでいただけると幸いである。〉(本書より) 江戸時代のことが誰もわからないのだから、〈これが真相である〉ということは成立するだろう。真相であるかどうかもわからない。わからないから、違った真相も次にあらわれるだろう。そして、どれもこれもが真相ということになる。真相だらけ。ウソだらけ。ゴチャゴチャの江戸時代だ。ウソの真相ということだ。本書はホントーのホントーの真相だろう。さらに新しい真相があらわれたとしても文句はいえないだろう。〈江戸時代の通説のウソ〉というのが本書である。 〈人物にまつわるウソ〉という章がある。徳川家康とか、光圀とか家光とか吉宗とか大岡忠相が名奉行だったとか、本書ではみんなウソである。ウソというのは、ホントーであると信じているヒトがいるということだ。おそらく日本の国民ぜんぶがホントー派であろう。ウソといわれて、どうとらえたらいいのか、どう反論していいのか。「ウソだけど、ホントー」と、いうことにすればいいのか。〈政治にまつわるウソ〉では、江戸の街が町奉行によって守られたというのはウソ、という。 〈通説・江戸の町奉行所は裁判の役割に加え、警察機関として町の治安を守っていた。治安維持の最前線を担っていたのは同心だ。(略)江戸は世界でも類を見ない平和な町になったのだ。〉(本書より) これも、本書ではまっかなウソのようだ。それに、〈岡っ引きが町の治安を守った〉というのもウソのかたまり、と本書ではいう。もし、これがホントーだとすると、これからのテレビ・ドラマに出てくる岡っ引きを、どーとらえたらいいのか。ホントーだと思って観ているのだが、ドラマなどを観ながらハラハラ・ドキドキするわけだ。「また、ウソをやってる」なんて、思いながらでは観ていても、身がはいらない。「江戸時代はウソでした!! どーもスミマセン」と、誰が頭を下げてあやまればいいのだろうか。もっとも、そんなのを見たくもないけどね。子供の時、「ウソはドロボーのはじまり」と、教わったものであった。困ったのは通説である。 |
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