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評者◆秋竜山
アで始まってンで終わる、の巻
No.3431 ・ 2020年01月18日




■昔は電話がリーン・リーンと鳴ったが(今の電話もそーだけど)、今はケータイとなってリーンとは鳴らない。そして、ケータイはポケットの中にあり、ポケットの中でリーン・リーンはなくなった。リーンにかわって好みの音楽などが鳴りだす。そして電話といえば、「もしもし」である。しかし、ケータイとなるとあまり「もしもし」などという人はいないようだ(そーでもないか)。ケータイで「もしもし」はあまり時代おくれとでもいうのだろうか。それに昔の電話のように「もしもーーーし」なんて叫ばない。電話で話の最中に急に話し声が遠くなったりすると「もしもーーーし」と声を大きくする。「もしもし」とは「申し申し」の略であり、電話用語のようなものである。電話で「おーーい」なんて叫ばない。遠くにいる人を呼ぶ時など、「おーい」と、いう。「もしもし」なんていわない。電話では話し声が遠くになった時など「もしもーーーし」などというが、遠くになればなるほど、電話だから声が小さく聞きにくい時のことを声が遠くになるという。「もしもーーーし」も「もしもーーーーーーし」と長くのばしていう。田舎のオッサンなどは「もすもーーーす」なんていったりした。ケータイの場合は性能がいいせいか、声が遠のいたりはしない。だからケータイでは「もしもーーーし」なんて、いう必要もない。それに、ケータイはポケットから取り出して、歩きながら話すのであるから、「もしもーーーし」なんて、いきなりやられては隣の人がビックリしてしまうだろう。
 私は昔、若い頃、田舎の温泉場の郵便局でちょっとばかり勤務したことがあったが、その当時は郵政省の特定郵便局といって、地方のどこの特定郵便局には電話交換を扱っていた。電話交換手である。電話交換手といえば女性に決まっていたが、私などは電話交換手もやらされたのであった。未来の電話は女性に代わって男性の時代がくる!! なんて、嘘ばっかりだった。
 多湖輝『心理トリック』(ゴマブックス、本体一二〇〇円)では、
 〈本書は、1971年12月に刊行された「心理トリック 人を思いのままにあやつる心理法則」を復刊したものです。〉(本書より)
 と、いうことであるが、今の時代になっても、内容がちっとも古さを感じさせない。むしろ今より新しい。
 〈彼らは感覚・直観で行動するフィーリング人間である。その彼らのフィーリングをキャッチするには、彼らの感覚直観に訴えなければならないことは、自明の理である。では、いかにして彼らのハートをつかむか。(略)聴触覚にすぐれている彼らには、商品のイメージを音で表現しなければならない。ここで登場するのが、バタバタ、アンアン、イエイエ、アブアブ、ワイワイ、ポンポン、ジョワジョワ……の無意味な二音反復語である。彼らの会話を聞いていると、こうした無意味な言葉がポンポン飛び出し、私などにはチンプンカンプでさっぱりわからないが、それで通じているのだから不思議だ。若者の心理に通じているというある評論家によれば、「無意味の意味」は、こういうことになる。〉〈二音反復の音のトリック〉(本書より)
 と、いうことだ。あの頃、ナンセンス漫画における、「無意味の意味性」など、若手の漫画家たちと、息を吐いたものであった。若手の編集者が、「今度、アから始まってンで終わる、アンアンという雑誌を出しますよ」と、自慢げに言った。「ちょっと、待って下さいよ。私もとっくに、アから始まってンで終わってます」と、いうと、「秋竜山。たしかに!」と、ニガ笑いをさせた。







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