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評者◆秋竜山
みんな脳のしわざ、の巻
No.3429 ・ 2020年01月01日




■ヒトによって頭の重さ軽さはあるらしい。そして、スイカを叩くように頭を手で叩いてみると、音によってよい頭か悪い頭かわかるものであると、子供の頃聞かされた。もちろん冗談であった。それは悪い冗談であり、子供にそんなことをいうものではない。子供は信じてしまう。大人になって嘘とわかっていても、その時のことを思い出してしまう。思い出して、どーってことはないけれど、いくつになっても忘れられない大人の冗談である。母親に、「そんなバカなこと考えるんじゃないよ。ホントーにお前はバカだねえ」と、いわれた。いい頭は脳ミソが沢山つまっているからであり、重い。軽い頭はその反対ともいわれた。レントゲンなどで脳ミソを見たりするが、たしかに年をとるとスカスカの脳になってしまうものだ。だから頭が軽いのか。堀江貴文『考えたら負け』(宝島社新書、本体八三三円)では、
 〈いちばん怖いものは未来を恐れ、「心ここにあらず」の状態になってしまい、停滞してしまうことだろう。不安にさいなまれ、思い悩み、考え込んでしまうも守りに入り、行動できなくなる。そういう意味で、「考えたら負け」の時代がきっとくる。〉(本書より)
 思い悩んだり、考え込んだりするのも、みんな脳のしわざである。自分の脳だ。誰の責任でもない。そして、バカとかリコウとか。他人にバカといわれれば腹がたつものである。バカといわれて、よろこぶヒトはいないだろう。
 〈リスクを小利口に計算しないバカさ加減が、イノベーションを生み出す(略)〉〈仮にそのリーダーは「バカ」でもいい。というか、真っ先に行動を起こす人間は良い意味で皆バカだ。僕もバカだ。成功している起業家にもバカが多い〉(本書より)
 自分をいつもバカだと思っているヒトにとって救いを感じさせてくれる。「ヨカッタ俺は、バカで、俺にも可能性のようなものがあるじゃないか」と、まず自分の脳が考える。
 〈「バカ真面目」はタチが悪い〉〈「一つひとつの仕事に全力投球しなければ不誠実だ」と考えるバカ真面目が、あまりにも多いことに驚く。そういう人間ほど仕事が遅く、量も質も悪かったりするからタチが悪い。たまに手抜き仕事をしたって、誰も気づきやしない。すべてに全力投球もいいが、それで力尽きてしまっては元も子もないのだ。〉(本書より)
 アッ、これは俺のことをいっている。たしかに、その通りだ。と、自分の脳が考える。
 〈未来が不安だなんて暇人の言うことだ〉(本書より)
 俺って暇人なんだろうか、と、脳が不安になってくる。
 〈バカには、いい意味のバカと悪い意味のバカの2種類ある〉〈前者は後先考えずにリスクを恐れずにチャレンジできるという意味のバカ。後者は本当に知識と教養がないバカなんですが、これが結構、同居している経営者って多いんです〉(本書より)
 どっちの意味においてもバカである。バカはバカである。なんとなく自分のようにも思えてくる、と脳が考える。そして、「アア、自分はもっとバカにならなければならない」と、脳は考える。そして、「使いもんにならないバカってのもあるからなァ……」と、脳は思う。







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