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評者◆ベイベー関根
プチエキセントリックおじさんたちの平熱地獄?
そこらへんのおじさん物語
佐久間薫
No.3427 ・ 2019年12月14日




■最近さー、生きづらいとか行き場がないとかって、よくいうじゃない?
 その通りだよ! 何とかしようぜ!
 というわけで(でもないが)今回とりあげるのは、佐久間薫『そこらへんのおじさん物語』だ!
 内容を帯文がめっちゃうまくまとめてるので、使わせてもらおう。「身近にいたら地味に面倒くさいけど、名もなく貧しいながらもそれなりに楽しく生きている、12人のおじさん達の物語」……その通りだよ!
 目次を見ると、「センチメンタルおじさん」「綿おじさん」「念力おじさん」「2個ずつおじさん」「イマジンおじさん」と、何をどう考えたらいいのかよくわからない並びになってるけど、実際いそうでいなさそうで、実はいそうなおじさんたちが勢揃いだ!「なめくじおじさん」では、ベートーべンを尊敬するヘンなパーマのおじさんが、家にいついたなめくじとテレパシーで会話ができるようになるものの、お見合いパーティーでようやく見つけたケバいお姉さんが家にやってきて……ああっ、もう書けねえ! とにかくエモい展開を迎えることになって、めっちゃ泣かされるんだよなー。
 でもたぶん作者としては、これはちょっとやりすぎたと感じてたんじゃないだろか。その後はもちっと平熱に近い設定で、はたから見るとめちゃくちゃちっさい部分にクライマックスを見つけてお話を作る感じに寄せてきてる。で、またそこがいいんだな!
 キャラクターはイタズラ描きっぽい感じながら、意外に手とかはしっかり描いてあるのも面白い。そう思って見ると、背景とか小道具とかもわりときっちり描いてあるんだよね。毎回タイトルの扱いも違ってるし、絵自体のアプローチもちょこちょこ変わってるし、だけどやっぱり素人っぽいことは素人っぽいし……と、実はめっちゃナゾな作品な気がしてきた!
 で、このディテールの豊かさが、後から効いてくる気がするんだよね。一種のファンタジーかと思っていたら、10年後くらいに、この時期の独身の成人男子の生態とか感じていたプレッシャーを表す作品として再発見されるんじゃないだろうか。前にここでとりあげた『中年童貞』ほどヒドくはないものの、そういう人の孤独さやこじらせ方が、実はすごいリアルに捉えられてる作品でもあるんじゃないかという気がするな。
 作者の佐久間さんは、文藝春秋から『猫ニャッ記』という夫婦と猫の暮らしをゆる~~く描いたエッセイマンガがあるほか、自費出版で何冊か作品集を出しておられる。それぞれ持ち味が全然違うので、みんなこれかと思って買うとヤケドするけど、ともあれいろんな方向を試してもらいたいもんだ!







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