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評者◆秋竜山
そのトンネルを抜けると……、の巻
No.3420 ・ 2019年10月26日




■「般若心経」であるが、「般若心経」と、読むという。「般若心経」と、読んではいかんのか。どうやら、正しくは「般若心経」らしい。なぜ、「心経」ではいかんのか。もの知りにたずねてみたら「みんな、般若心経と呼んでいるのだから、そう呼べばいいんだ。なにも〓心経〓と呼ばなくてもいいだろう」と、いわれた。私も、どっちでもいいと思っているし、それが正しい呼びかたであれば、それでいいわけだ。時々、「般若心経」と、呼ぶ人がいたりするが、私は何もいわず、それにいうこともない。正しく呼ぶヒトにとっては、間違って呼ばれると気にくわないだろう。
 志村史夫『いやでも物理が面白くなる』(講談社ブルーバックス、本体一一〇〇円)は、過去にも引用させていただいた。中身がこいというのは、興味深い内容がいっぱいつまっているということである。
 〈「般若心経」の名を世に知らしめているのは、「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」という有名な文句である。これを文字通りに訳せば「色は空に異らず、空は色に異ならない。色は即ち空であり、空は即ち色である」ということになる。わかったようなわからないような、キツネにつままれたような気分にさせてくれる文句である。〉(本書より)
 キツネにつままれるということは、このようなことをいうのか。キツネにつままれたかったら、般若心経を呼べば味わうことができる。
 〈この場合、「色」は「形あるもの」“物質”の意味であり、森羅万象のすべてを指す。「空」を理解するのは簡単ではないが、一般的には“固定した実態のないもの”と解されている。“真空”の“空”と考えてもよいだろう。つまり、「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」は、簡単にいえば、「形があるもの(物質)には、実体がなく、実体がないものが形があるもの(物質)である」ということである。〉(本書より)
 やっぱりキツネにつままれるということは、ある意味で心好くもある。キツネに化かされるのではなく、つままれるのである。
 深夜、眼があいたので、眠れないままに、考えてみた。考えてもわかるわけがないことはわかっているが、とにかく考えてみた。すると、「トンネル」が頭に浮かんだ。山に穴を開けたトンネルである。その穴に道路をつくれば自動車道となる。線路をひけば鉄道となる。そして、「空」についてである。山でありながらにして、穴を開けられてしまったから、そこは、空間であり「空」であるということだ。そして、空でありながらにして山であることは間違いないところだ。「トンネルを抜けると雪国だった」という有名な小説がある。つまり、「空」を抜けると雪国だったということになる。トンネルの中を歩くということは、「空」を歩いているということになる。まさに、般若心経の世界を歩いているということだ。その「空」も「入口」があれば「出口」があるというものだ。出口なきトンネルなど聞いたこともない。穴が行き止まりのトンネルなんてのも聞いたこともない。トンネルの中を歩きながら、般若心経をとなえてみるのもよいだろう。そのトンネルを抜けると……。







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