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評者◆miとメリ
なにも足さない。なにも引かない。
詩人の声をきいた木
谷川俊太郎・詩、加賀見博明・写真
No.3405 ・ 2019年06月29日




■言葉と、写真。どちらも記憶に残るものを組み合わせると、まるで違うものになるように感じ取れる。その時の読み手の気分で表情が変わっていく、そういう本は希少に思える。
 写真家・加賀見博明氏が15年間、見つめてきた槐の木をもとに、詩人・谷川俊太郎氏の言葉をのせた写真集ということだろうか。いや、詩集かも知れない。この一冊は、どちらの面も持っている一冊であるが読み手は好きな方を感じ取ればいいのだろう。
 そう、この一冊は書評に値する値打ちというものを持っていないと思う。読み手の感じ方で、ページごとの詩と写真で、その都度気持ちが変わるのであるのだから。
 写真家は独自のこだわりを持つ方が多い。加賀見氏はこの一本の槐の木にこだわりを持ち、いろいろな表情を長い間追い求めてきたのがここに出てくる写真たちである。
 他の方であれば、桜を写し続けてきた方もいた。もっと世界を広げればロバート・キャパのような写真家もいる。撮し手の数だけこだわりの数が無数にある。
 詩も同じだと言えるだろうか。詩を詠む人の数だけ、言葉の集まりが増えるであろう。言葉はもっと多いかも知れない。日本語もそうだし、英語、フランス語などの外国語を含めばもっと数が多いだろう。言葉の組み合わせも無限大なのだろう。
 こう書いても、この本のレビューに適した言葉が見当たらない。それはそうだろう、この本は読み手によって変わるのだから。ただ一つだけ言えることがある。それは、評価などは気にせず、手に取る機会があれば一度は目を通して感じ取ってもらいたい。
 これが妥当なレビューになるような気がする。こうして期限ギリギリまで読んで、見てきたが感じ取れるのはこちらの感動しか思いつかないのだから。
 人によってはこの感動=感情が変わるので、ありきたりな言葉で申し訳ないがそのようなレビューとしたいと思う。
 悲しそうに見える槐の木。そう思うのは読み手の勝手か?
 当の木にしてみれば、自然を楽しんでいるだけだよと言われているような気もする。
 楽しむことも、悲しむことも本人(木)の勝手だろう? 動けないように思えても、自然の偶然でここに生まれて、今まで見つめてきたから楽しみ方を知っているんだよ。木生の楽しみっていうやつだよ。逆に人間を今まで見つめてきたんだよ。
 それならば、人間が生み出した言葉の集まり、詩をあなたに贈ろう。春夏秋冬、喜怒哀楽を美しい言葉で綴ったものだ。長い年月を語れる言葉でないが、その中の一場面、一場面を思い出に残すことができるものだ。
 そう感じられた瞬間、あなたと私の気持ちが通じあった時だと思う。







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