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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3397 ・ 2019年04月27日




一年の記念日を本で読んでみよう
▼子どもの本――伝統行事や記念日を知る本2000冊 
▼日外アソシエーツ 編集・発行
 いったい今日は何の日?  子どもの頃は、そんな話題に事欠かなかったですね。いろんな日があることを知って、ワクワクする毎日でした。四月なら、一日のエイプリルフール。そしてもうすぐやってくる、とても楽しみな連休は、五月三日が憲法記念日、四日がみどりの日、五日がこどもの日、などなど。
 この『子どもの本』は、伝統行事や年中行事や祭りなど、さまざまな記念日に関係する図書二五五〇冊を、暦順に並べた一冊です。収められているのは、小学生以下を対象とした物語や絵本、漫画などを含む本で、二〇〇三年以降に刊行されたものが中心です。
 いったいどんな本なのか、たのしみです。ためしに四月のページを開いてみましょう。エイプリルフールの一日に挙げられているのは、松田哲夫編『中学生までに読んでおきたい哲学 3 うその楽しみ』(あすなろ書房)です。「うそ」にまつわるエッセイや短編を集めたアンソロジーで、エイプリルフールの日の読書にはまことに最適な一冊。
 四月一〇日は駅弁の日、って知っていましたか? この日の欄に挙げられたおすすめの一冊は、都道府県の特産品編集室著『調べてみよう都道府県の特産品 駅弁編』(理論社)です。元祖鯛めし、あなごめし、ますのすしなど、紹介されている駅弁のタイトルを見るだけで、涎が出てきそう。
 四月一二日はパンの記念日です。たくさんの本があがっていますが、おおでゆかこ絵/梶晶子レシピ・監修『ふわふわパン作り』(河出書房新社)もその一冊。おいしいパンがおうちでつくれるレシピの絵本だなんて、この日にぴったり! さっそくパン作りに挑戦です。
 四月一九日は地図の日。いまから二〇〇年以上前のこの日に、伊能忠敬が最初の測量のために蝦夷地へ出発した「最初の一歩の日」だそうです。小学生が地図になじむにはもってこいの日ですね。この日に読む本は、たとえば『見て、学んで、力がつく! こども日本地図』『楽しくぬって日本地図まるわかり!』『これだけは知っておきたい世界地図』『遊んで学べる! えほん世界地図』など、実に盛りだくさん。日本へ、世界へとイメージが広がっていく一日ですね。
 『子どもの本』はこんなふうに、実にたのしく役に立つ一冊です。巻末に書名索引も付いていますし、公立図書館や学校図書館、幼稚園や保育園での本選びや、季節感あふれる本の紹介にはもってこいです。(3・25刊、A5判三九〇頁・本体八四〇〇円・日外アソシエーツ)


消えたクラスメート、そして私の家族も……
▼ポーン・ロボット
▼森川成美 作/田中達之 絵
 ある日の夕方、ジョギングをしていた主人公の宇喜多千明は、頭まで黒づくめの妙なランナーを見かけました。妙な理由は、坂道をのぼっているのに腰がぶれず、頭や上半身をゆらしもせずに、下半身だけをうごかして走っていたからです。その異様な姿のランナーを追いかけて、だらだら坂をのぼって走った宇喜多は、三〇メートルほどの距離にまで近づきました。そして、住宅街と梅林との境目を走る一本道へと曲がったときに、走っていた男が、忽然と姿を消したのです。
 翌日のことです。千明のクラスメートの仁科正太郎が、家族ともども蒸発しました。正太郎の家は、昨日、あの男が姿を消した梅林の向かいにありました。
 正太郎の席は空白のまま、学校は夏休みに入りました。そんなある日のこと、商店街を歩いていた千明は、時計屋で万引きしている青い髪の少女を見てしまいます。そんなことをしちゃだめだ。千明はそう思いました。するとどうでしょう。念じたことが効いたかのように、少女は万引きをやめたのです。
 自分になにやら不思議な力がはたらいている――。そんな力を感じながら、やがて千明は意識が遠のいて、前に倒れてしまいます。
 気が付くと、もとの商店街。もう夕方になっていました。千明が家に帰ると、なんと、家がなくなっていたのです。そして、正太郎がいなくなったときと同じように、自分の家族も行方不明になってしまった……。
 いったい、この町に何がおきているのだろう。千明はその謎を解くために動きだします。そして、卵型をした未確認飛行物体の目撃情報に突き当たるのです。
 きっと、この町は、誰かにねらわれている‐‐。ミステリアスな世界に私たちを引きこんでいく、息づまるような展開の物語が、こうして幕を開けます。(3月刊、B6判二三〇頁・本体一二〇〇円・偕成社)


日本人って、いったいだれのことだろう
▼国籍の?がわかる本――日本人ってだれのこと? 外国人ってだれのこと?▼木下理仁 著
 「日本人」って、いったいだれのことだろう。「日本人っぽい」人? でも、その「っぽい」って、何? どうしてそんなことがいえるんだろう?
 「日本人」は、日本国のパスポートをもっている、つまり日本国籍の人ってこと? でも、そうはいいきれないってことを、この本はいろんな角度からわかりやすく教えてくれます。
 日本の国籍は、「血」(親や祖先)による「血統主義」によって決めます。アメリカは生まれた場所による「出生地主義」だそうです。世界では二重国籍を認めている国が何十カ国もありますし、三重国籍になっている人もいるそうですが、日本は二重国籍を認めていません。国際結婚で生まれた人や、両親は日本人でも出生地主義の国で生まれた人は、二二歳までに国籍を選択しなければならないと国籍法で決められています。
 でも、それは本人のつごうではなく、国のつごうなのです。たとえば、在日韓国・朝鮮人や在日コリアンは、著者の木下さんの言葉をかりると「ある日とつぜん日本国籍にされ、ある日とつぜん外国人にされた」のです。
 歴史を見ると、朝鮮半島が日本の植民地だった時代、彼らや彼女たちは「大日本帝国臣民」として扱われ、皇民化政策や創氏改名を強制されました。それが日本の敗戦後、朝鮮半島出身者は「外国人とみなす」とされました。つまり「日本人」ではないと決められたのです。国のつごうで「日本人」にされたり「外国人」にされたりする例が、ここにあります。国籍がこうして人を統合したり、分けたり、排除したりするのです。
 いまは日本に住む外国人も多くなり、国際結婚も増えています。もう国境線で人を分ける時代ではないし、境界はどんどんわかりにくくなっています。そこに「日本人」のカテゴリーをむりやり当てはめようとしても、うまくいかないのです。
 国籍って何? 難民や無国籍の問題はどうなっているの? この本には、そんないろいろな問題を知ることができる、とても大事な内容が詰まっています。(4・10刊、四六判九六頁・本体一〇〇〇円・太郎次郎社エディタス)


「日本のマラソンの父」の長距離人生
▼金栗四三――日本人初のオリンピック選手
▼佐野慎輔 文/しちみ楼 絵
 小峰書店から刊行中の「オリンピック・パラリンピックにつくした人びと」全六巻のうちの一冊。一九一二年の第五回ストックホルム・オリンピックに、日本人選手として初めて出場したマラソンランナーの金栗四三が主人公です。
 金栗は「日本のマラソンの父」ともいわれ、日本スポーツ界に大きな一歩をしるしました。2019年NHK大河ドラマ「いだてん――東京オリムピック噺」の前半にも登場します。この本は、そんな金栗の輝かしい生涯をえがいています。
 金栗は一八九一年、熊本県の現在の和水町に生まれました。そして一九〇九年に、嘉納治五郎が校長をつとめていた東京高等師範学校に進学します。嘉納はこの年、東京オリンピック委員会(IOC)の委員に選ばれています。東京高師でめきめき頭角を現した金栗は、嘉納が選手団長となって初参加したオリンピックに出場したのでした。
 しかしこの時は、炎天下の暑さのために二六キロ地点で意識を失い、「消えた日本人選手」として話題になりました。金栗は四年後のベルリン・オリンピックを期しますが、第一次世界大戦の戦争拡大により、大会は中止となり出場の夢はもろくも潰えます。
 しかし金栗は挫けませんでした。一九一九年には第一回箱根駅伝を企画し、成功させます。そうして翌二〇年にアントワープ大会でマラソンに出場し、一六位で完走しました。
 金栗は「体力、気力、努力」を後輩たちに語り継ぎました。「オリンピックでは外国の選手に勝つためには、ふつうの練習をしていてもだめなんだ」とも語っています。そうして一九八三年、九二歳の長寿を全うして生涯を閉じました。そんな長距離走者の人生に、魅了される一冊です。(12・25刊、A5判一五八頁・本体一四〇〇円・小峰書店)


復活祭の意味をやさしつ伝える絵本
▼いーすたーのおはなし
▼ジュリエット・デービッド 文/スティーブ・ホワイトロウ 画/女子パウロ会 訳
 イースターは、復活祭のこと。それはクリスマスと同じく、毎年春にめぐってくる、キリスト教の大切なお祝いの日です。この絵本は、イースターの意味をやさしく伝えてくれる一冊です。
 イエスさまには、一二人のお弟子がいました。イエスさまはエルサレムのまちのお祭りにおでかけになり、人びとにとてもよろこばれましたが、そんな様子を、「イエスはさわぎばっかりおこす」と、よろこばない人もいました。そしてお弟子の一人ユダが、兵隊をつれてきて、イエスさまをとらえてしまいます。
 イエスさまはえらい役人ピラトのところへ連れていかれました。そこでたくさんの人が、イエスさまを「殺せ、殺せ」とさけびました。ピラトはおそれをなして、人びとのいうとおりにします。兵隊はいばらの冠をイエスさまにかぶせて、丘のうえにつれていきます。そうして十字架にかけたのです。
 イエスさまは亡くなられますが、復活されます。わたしたちの幸せのために死んでくださり、復活してまたわたしたちといっしょにいてくださるのです。復活祭は、そのことを思い出す日なのです。そして今年も、その日がやってきます。(16・2・5刊、17cm×17cm二六頁・本体九〇〇円・女子パウロ会)


迷路のゴールまでワクワク、ドキドキ
▼おもちゃのくにでおおさわぎ!
▼宮本えつよし さく・え
 好評のシリーズ「フルーツじまのなかまたち」の第三弾の登場です。
 フルーツじまは、海にプカプカうかぶ、ふしぎなしま。そこには、これもやはりふしぎな、とてもかわいい動物たちが、とってものどかに暮らしています。シリーズの第一弾『ベリーミミちゃんをすくいだせ!』では、しまでスイーツのお店をひらいているベリーミミちゃんが、とつぜん姿を消してしまい、みんなで迷路のなかを探します。第二弾の『フルーツパンをつくろう!』では、しまにパンの国のパン屋さんがやってきますが、最近はパンを食べなくなってしまい、しまのパン屋さんは元気がありません。でも、なんとかおいしいパンを作って喜ばせようと、みんなで食材をさがしに迷路探検です。
 さて、第三弾はどんなお話でしょう。こんどはフルーツじまに、おもちゃの国から招待状が届きました。みんなは大喜びで遊びます。ところが、おもちゃの国のマスコットのクマタンが、突然あばれだして、まちをこわしていくのです!
 いったい、この先どうなっていくのでしょう。みんなでクマタンの暴走をとめられるのでしょうか? 迷路はますます難しくなっていきますよ。はたしてゴールまでたどりつけるか……。ワクワク、ドキドキ満載の絵本です。(3・30刊、A4変型判二四頁・本体一三〇〇円・新日本出版社)







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■新潟■萬松堂様調べ
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2位 老いの福袋
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3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
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