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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ⑰――構造としての〝アベシンゾー〟⑨
No.3391 ・ 2019年03月16日




■まったくひどいものだ。憲法改正の必要を安倍総理が口にするたびに、その中身はコロコロ変わる。有名になった「みっともない憲法」発言(2012)に始まり、最近では「違憲」の自衛隊に「何かあれば、命を張って守ってくれ」というのはあまりに「無責任」だという発言(2017)とか、「自衛官の募集」について「自治体の6割以上が協力を拒否している」(2019)から改正が必要だとか、およそ本質的な理由にならない事柄ばかりが飛び出してくる。彼の“憲法改正”がただの寝言にすぎないことは前から分かっていたが、改めて振り返るとそのヴィジョンの貧しさに背筋が寒くなる。
 私は憲法改正をめぐる世論調査結果に、賛成か反対かの選択項目とは別に、「安倍政権のもとで憲法改正を実現すること」に「反対」だという回答が「58%」(朝日新聞全国世論調査、2018)もある事実に注目する。この数字は、改憲についての一般的な議論とは判断のベースがあきらかに違うように思う。なぜなら“安倍改憲”という第三の審級に対するこれは極めて自覚的な拒絶の意思表明だと映るからだ。
 改憲派と護憲派のこれまでの関係は、完全に信念対立の構図であった。何がなんでも改正したい側と、指一本触れさせない側との、いわばイデオロギー間のぶつかり合いであった。これに対して“安倍改憲反対58%”という数字に込められた一般意志の核心は、安倍晋三とその政権が体現する“悪の象徴性”を自分たちは今後受け入れないぞという断固たる“声なき声”の発露なのである。
 ポピュリズム、権威主義、数々の隠蔽・改竄・虚言体質からなる官邸独裁と統治機構のスラム化を、私たちはこの先も容認するのか。あるいはそうした政権にきっぱりと否を突きつけ、憲法に謳われた本来の民主主義と権利や自由の実現のためにより相応しい政権選択を模索していくのか。この数字が訴えているのは、その答え以外ではない。つまりこれは内閣支持率には現れない安倍政権への引導なのである。(つづく)







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