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評者◆小嵐九八郎
精神病に苦しむ人人の歴史――原義和編著『消された精神障害者――「私宅監置」の闇を照らす犠牲者の眼差し』(本体一五〇〇円、高文研)
No.3387 ・ 2019年02月16日




■一月半ば、NHKのEテレで、沖縄でのかつての精神病者の「私宅監置」について放映していた。「私宅監置」とは、地域や家族や共同体から排除して、“座敷牢”かそれよりひどい小屋などに封じ込めてしまうことだ。60年安保の共産主義者同盟書記長の島成郎さんが精神科医となり沖縄でこのテーマと格闘したことをいつか書いたことがあったけれど、当方は恥ずかしいかなほとんど無知できた。むろん、本土でも一九五〇年の精神衛生法ができるまで存在していた。沖縄では日本復帰まで、一九七二年まであったとのことで、テレビの映像はそのリアルな写真も出てきて胸が押しひしがれた。
 それで、その放映の後、書店でぶらぶらしていたら、ジャーナリストの金平茂紀氏が「外来者、異端者、少数民族らと同時に、犯罪者と病者が、隔離・排除された悲しい歴史がある。とりわけ精神に疾患をもつ者たちが『監置』という名のもとに社会から隔離されてきた事実は、これまで直視することさえ避けられてきた。本書はその闇に光をあてる。誠実とはこういうことだ」との帯の推薦文を記した本が目に入った。金平茂紀氏は、去年の韓国最高裁で元徴用工に対しての賠償命令判決を含めての日本のテレビ報道の反感一色について、今のアメリカのトランプやその支持者より「排外主義」と、実に冷静かつ勇気のある意見を「毎日新聞」の夕刊(一一月一七日)の『テレビ評』で記していた。当方は、テレビだけでなく週刊誌、大新聞も一色と不気味に映っていたので嬉しかったゆえ、その本を購入した。それは『消された精神障害者――「私宅監置」の闇を照らす犠牲者の眼差し』(本体1500円、高文研)だ。編著者はフリーだが冒頭のテレビ放送のディレクターの原義和氏、解説は沖縄県精神保健福祉会連合会の高橋年男氏だ。
 ああ、自称歌人であるのに老いてますます簡潔性を失う。要するに沖縄だけでなく台湾、西アフリカの精神病に苦しむ人人の歴史がぎっしり詰まっている。そしてなお現代日本をも覆う闇が、浮かぶ。







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