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評者◆林田力
冤罪を生み出してはならない
瑠璃色の一室
明利英司
No.3377 ・ 2018年12月01日




■明利英司『瑠璃色の一室』(書肆侃侃房、2018年)は現代日本を舞台としたミステリーである。住宅街の中にある寂れた公園サンパークでホームレスが殺された。帯にはホワット・ダニットと書かれているため、何が起きたかが問題と思いながら読み進めるが、それも著者の仕掛けかもしれない。実はフー・ダニットの要素がある。
 本書には3人の視点人物が存在する。元恋人への復讐を目論む鈴木真里、冷静な観察眼を持つ刑事竹内秋人、精神科病棟で友の帰りを待つ桃井沙奈。章毎に視点人物が変わり、それが繰り返される。視点人物の一人は刑事である。
 刑事の捜査の進め方が分かるが、これでは冤罪が生まれると感じた。基本的に一人で進めており、上位のマネジメントが見えない。ねじ曲げた捜査をしようと思えばできてしまう。海外の警察物はもっと会議のシーンが多い。テレビドラマ『踊る大捜査線』の「事件は会議室で起きていない」は官僚的な形式的な無駄な会議を批判したものであるが、内部統制の観点で悪影響を与えているかもしれない。
 本書の刑事には鋭い閃きがあり、冤罪を生まずに踏みとどまった。しかし、並の刑事ならば思い込みで突っ走り誤認逮捕になりそうである。また、若い女性に対する態度も外部から見れば問題である。性犯罪の警察不祥事が多いことが理解できる。
 当初の事件は偶発的なものであり、それほど頁をめくる手が速まらなかった。ミステリーの犯人は『金田一少年の事件簿』が典型であるが、壮絶な過去を抱えていないと物語が面白くない感じた。終盤は色々な話がつながり、意外な展開に頁が進む。







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