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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ⑫――構造としての〝アベシンゾー〟④
No.3371 ・ 2018年10月20日




■大方の予想通り安倍首相が三選を果たし政権は三期目に入ったわけだが、安倍個人に焦点を当てた場合、その政治的な支配類型は合法的でも伝統的でも、ましてやカリスマ的ですらない。では、いったい何なのか? 私にはそれが、カリスマ支配を装わせた“総理大臣”ごっこに見える。
 真のカリスマと違う点は、「アベノミクス」や「景気回復、この道しかない。」といった大衆を情緒的に惹き寄せるデマゴギーが、自身のオリジナルな見解ではなくすべて他人によって作られていることだ。さらにこの構図が滑稽なのは、自分流の唯一の信念であるはずの「憲法改正」にしてからが、コアな支持母体である日本会議系の理念を丸呑みにしているわけで、つまりそれすらも他人からの借り物なのである。
 笑えないのは、そうした無能者が実際に権力を握って、どんな政治的不正や犯罪性の疑われる行動であっても、それら一切を不問に付し、長期にわたって“首相”として君臨し続けている事実だ。
 こうした裸の王様を単に「裸の王様だ!」と指弾するだけではまったく効果は得られない。この似非カリスマ指導者の真骨頂は、自身が裸であるのを隠すことなく、正々堂々と嘘をつき、その嘘を無条件で受容する“クレイジータウン”の住人たちを、政権内部はもとより官僚やマスコミ、教育界や産業界の津々浦々に幅広くポジショニングしたことにあるからだ。
 だが、ここでよく考えて欲しい。こうした人物が、政治指導者であり続けるパブリックな意味が本当にあるのだろうか? あるはずがなかろう。彼を支えているのは民意ではなく、そのクレージーさに付和雷同して自己の利益を掠奪しうる者たちであり、要するに金銭や地位、偏った思想へのお墨付きなど、私利私欲から自己充足を得たいだけの勢力なのである。
 自ら育てあげた政治信条もなく、話すのはぜんぶ虚偽妄言で、正義のひと欠片も生みだせない者による支配類型は、よって“バカトノ的支配”と呼ぶのが相応しい。(つづく)







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