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評者◆休蔵
店主がこだわり抜いた小さな本屋は魅力満載
日本の小さな本屋さん
和氣正幸
No.3369 ・ 2018年10月06日




■大型書店が幅を利かせるご時世だ。もちろん、いろいろな本を選べる環境はありがたく、よく活用しているが、同じような本が多いだけという印象を受けることも事実だ。本は多く並んでいるはずなのに、どこか物足りなさを感じる品揃え。そんな気持ちを察してくれたかのように、こだわり満載の小さな本屋も日本には存在するようだ。
 日本中にどれだけあるか分からないそんな小さな本屋のごく一部を本書は紹介している。
 店主のこだわりはさまざまだ。並べる本のセレクトは言うまでもない。
 東京の「Cat’s Meow Books」は猫が登場する本にこだわり、兵庫の「1003」は文学や食、酒を中心とした本をそろえているという。
 店舗選びや内装へのこだわりも相当なもの。広島の「弐捨dB」は元泌尿器科の医院を改装しており、元診察室にはソファーや椅子を置いてくつろぎまで提供している。
 熊本の「長崎次郎書店」は創業1874年(明治7年)の老舗で、店舗は国の登録有形文化財になっており、もはや店舗そのものが見学対象になりそうな雰囲気を持つ。
 岡山の「451BOOKS」は店主が設計というこだわりようで、螺旋階段が2階へ誘う。
 うなぎの寝床のような細長い町家を改装したという広島の「紙片」は、『風の谷のナウシカ』でナウシカが腐海の植物を育て研究していた部屋をイメージしたとか。
 店の立地にも余念がない。岡山の「蟲文庫」は倉敷美観地区にほど近く、長野の「NABO」は旧北国街道沿いにあるそうだ。街歩きの延長に存在するといったところか。きっと街並みの雰囲気に溶け込んでいるのだろう。
 小さな本屋には、店主の強い想いが込められている。自分の書棚に並べたい本を取り扱う人も多いようだが、古本のような1点ものの場合、その本を売ることに抵抗はないのかとふと思った。
 同様の疑問は本書でも取りあげられており、兵庫の「books+kotobanoie」の店主の答えは新鮮だった。
 たとえ本が売れても、それは買った人の本棚に移動するだけ。店にきて買ってくれた人の本棚に行くことは、自分の本棚にあることと同じと思うそうだ。
 器がでかい!
 今までいろんな手段で本を購入してきた。書店に行くこともあれば、ネットで済ませることもある。ただ、本を購入する手段に思いをやることはあまりなく、手に入ればいよいよ読むだけと思っていた。しかし、本書を読んで、それではいかんと思い直すようになった。
 本好きが高じて、ついには店を構えてしまった人たちがいることを知ってしまった今、まことに勝手で微々たるものではあるが、その人たちをバックアップせねばと感じた。余計なお世話かもしれないが……。
 これからは、本をセレクトするだけではなく、本屋のセレクトもするようにしたい。それでもやっぱり大型書店には行くけどね。







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