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評者◆ベイベー関根
この作品は、なぜ単行本に入らなかったのか?
おたからサザエさん 5巻
長谷川町子
No.3368 ・ 2018年09月22日
■さて、今回はいきなり本題に入るか。話題としては遅くなっちゃったけど、ウチとしては、やはりこれをとりあげないわけにはゆくまいて、長谷川町子『おたからサザエさん』全6巻!
この作品、要は『サザエさん』として新聞には掲載されたけれど、著者側の意向で姉妹社の単行本には収録されなかった作品ばかりを集めたもんなんだよな。収録されなかったのは出来が悪かったせいかというとそういうわけでもなく、ちょっときわどい表現になってたり、いわゆる差し障りがあるものは外そうっていう判断になったんだと思うんだよね。有名な「かくせい剤」ネタとか、修学旅行の女子高生が酒飲まされて寝ちゃってるというネタは、まあさすがにね……。 いやもちろん、なぜこの作品が単行本から外されたのか、という関心から読む手は確かにアリだとは思うんだよ、だけど実りがあるかというと、たいしてない気もするのな、だってこの場合、面白さの方が全然先に立っちゃうんだもん(笑)。いや実際、省略とスラップスティックがめっちゃ生きてるし、コケとかにもさほど頼ってないし(念のためにいいたいが、いつごろ始まったのかはわからないが、80年代中頃くらいまで、「オチはコケで表現する」というかなり強いしばりが4コマにはあって、いがらしみきおすらそこから抜け出すのにそうとう苦労していたのだ!)、ワカメちゃんは可愛いしさ(笑)。あと、今さらながら思うのは、田河水泡の弟子だったわりには、線はだんだん横山泰三ふうの硬い感じになっていくんだよなあ(で、横山はソール・スタインバーグとかを意識してるはず)。もちろんそれは軽みをもって扱われているから、全然悪くはないんだけど……。 というわけで、なぜこの作品が単行本に入らなかったのか、という疑問はどこかに行ってしまったわけだが、そういや、そんな本がほかにもあったな、そうそうこれだよ、去年出た本だけど、モンキー・パンチ『ルパン三世 単行本未収録作品集』。 いや、はっきりいうけど、『ルパン三世』ってけっこういろいろヒドいじゃない?(笑) つじつまなんかまったく合わせるつもりないし、最初のころは多少あったリアリズムもどんどんどっか行っちゃうし。まあ、ファンはそれを含めて愛していたわけだけどさ。で、なんでこのタイミングで? と思われたこの本も、ストーリーを別の人が書いてる作品を単行本からは外した、という事情はわかるにしても(しかし、たぶんその当時のモンキー先生の水準からすると、そちらの方が面白いはず)、そのほかの作品については外した理由がかいもく見当もつかん……! さしてヤバいネタが入っているわけでもなければ、出来が悪いわけでもない。単行本に入っているのもだいたいこのレベルなんだもん! まあ、なぜこの作品が入らなかったかとか後づけで考えようとしても、だいたいはムダ、ということか……。 |
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