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評者◆ベイベー関根
そのほかにも描くところはある!
金剛寺さんは面倒臭い 第一巻
とよ田みのる
No.3351 ・ 2018年05月19日




■とよ田みのるといえば、『友達100人できるかな』『ラブロマ』の人だったわけだが、どうもこう、人のよさが災いしてというか、そんなんでいいのかね? という気がして、もうひとつ推す気になれずにいたものの、今回の新作は、人がいいままその壁を突き破るような感じで面白いなあ。というのも、『金剛寺さんは面倒臭い』1巻ね。
 舞台は鬼と人間とが共存する世界。16歳の男子高校生・樺山プリン(鬼)が捨て猫を拾おうとしているところに17歳の女子高校生・金剛寺金剛(人)が通りかかって説教するところから話は始まる。そのそばで陣痛の始まった妊婦を素早く的確に病院へ送った金剛寺に、樺山はひと目惚れ。とっさに金剛寺は樺山を投げ飛ばす。金剛寺は学業優秀なだけでなく、柔道部で名をはせる超ツンデレ、いや、超ツワモノだったのだ!(実際あんまりデレない)
 翌日、投げ飛ばしたお詫びに樺山の自宅を訪れた金剛寺は、樺山が拾ってきた16匹の猫ちゃんたちに出迎えられる。実は猫好きの金剛寺は内心深く動揺しつつ、樺山が当家の人間のお婆ちゃんに拾われた存在であることを知る。帰り道、金剛寺も樺山の気持ちに動かされて、こう口走ってしまうのだった……「私も、君が好きだ」。
 以上、第1話。え! ふつうこれで終わりじゃないの!? この後どうすんの?もしかして、出落ち!?
 と心配になるところだが、ちゃんと続いていくのでご安心を。というか、わざわざこれを第1話にしているところからもわかるとおり、ロマコメが恋の成就をゴールにするものであることを考えれば、このマンガ、ある意味アンチ・ロマコメともいえるよな。
 実際、この先どういう展開になるのかというと、ふたりがイチャイチャするところ(といっても手をつなぐだけ)をバカバカしくかつハッピーに盛り上げてみせたり、周りにふたりのラブが波及してみんな幸せになってしまったり、樺山がうっかり金剛寺の心のフタをあけてしまったり、という話が続いていく。ヤバそうな地雷(伏線)がそこかしこに埋まったまま、表向きハッピーに進んでいくこのスリル! これらの伏線は無事回収されるのか? まあ、このまま終わるのかもしれないけど(笑)。
 絵はホントに丁寧で、背景の細かいところまでびっしり描きこんであってなかなかスゴいわけだが、いわゆる日常系マンガの描き込みが、日常を丁寧に描写することを旨とするがゆえにしっかり描き込んであるわりには、まあ写真から起こしとけばいいんでしょーというふうにしか見えないのに比べ、恋愛しているとお互いの姿しか見えないとされがちな通念に反し、実際にはより世界が目に入ってくるようになるという狙いとあいまって非常に効果的に仕上がっている点は特筆に値すると思うぜよ! 恋愛vs.世界の闘いでは世界を支援せよ? というか、人のよさを描写で突破してみせたということか!?







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