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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3349 ・ 2018年04月28日




小学六年間の記録に絵本作家の片鱗が
▼過去六年間を顧みて――かこさとし 小学校卒業のときの絵日記
▼かこさとし
 『からすのパンやさん』などで知られる絵本作家のかこさとしさんは、これまで五〇〇点以上の絵本を世に送り出してきました。物語絵本、科学・天体・社会関係の知識絵本、童話、紙芝居など、作品は多岐にわたります。一九二六年生まれですから、今年で九二歳。この本は一九三八年、かこさんが一二歳の小学校卒業時につづった作文をまとめた本です。
 かこさんは福井県中部の武生(現在の越前市)生まれで、東京の板橋区に引っ越し、板橋第四尋常小学校を卒業しました。一九三八年といえば日中戦争に突入した翌年で、国家総動員法が制定された年に当たります。まさしく日本が戦時体制に向かう、きな臭い時代のなかで、かこさんは小学校を終えたのです。
 卒業を前にかこさんは、担任の先生から小学生時代をまとめるように言われました。そこで六年間をふりかえって記録します。武生の小学校入学、兵隊ごっこに興じた一年生、上京した二年生。このとき東北飢饉の報道にふれて、友だちとお金を送ります。四年生になったとき、先生に絵の指導を受けました。この本に収められた絵入りの記録をみると、八〇年前とは思えない躍動感あるみごとな色使いです。もう絵本作家の片鱗が見られることに驚きます。五年生のときは選挙粛正運動、南京占領の祝賀大旗行列にも加わり、カラフルな絵で表現しています。中学受験パスの喜びも絵が物語っています。
 一人の小学生の時代記録であり、絵本作家の源流を知るうえでも貴重な記録満載です。(3月刊、四六判一五二頁・本体一六〇〇円・偕成社)


君に告ぐ、大人の秘密を探れ!
▼モテる大人になるための50の秘密指令
▼ピエルドメニコ・バッカラリオ、エドゥアルド・ハウレギ 著/アントンジョナータ・フェッラーリ絵/有北雅彦 訳
 伝説のスパイから秘密指令がやってくる――。もう、冒険好きにはたまらない一冊。だって、秘密諜報員になるためのマニュアルなんですから。しかもこの本で学ぶことは、ぜったいに忘れてはいけないことばかり。この本を使いこなせるようになれば、君も一人前の秘密諜報人まちがいなし。
 秘密指令は、大人の秘密を探れ、謎を解き明かせ、というもの。まず、僕たちにとってもっとも身近な大人、親を観察するんだ。
 秘密諜報員には、敵のなか、家や学校のなかで生き抜く能力が要ります。忍耐力はもちろん、人を気づかったり優しくしたりする力、コミュニケーションの力も要る。アイデアやひらめき、とっさの判断も、とても大事。体も鍛えないといけません。
 炊事に洗濯、赤ちゃんのおむつ替え、おしゃれ、デート、マッサージなどなど。大人がこなすどんなことも、できなくちゃいけない。
 口うるさい親たちに見つからないように、忍者のように行動することも必要。新聞を読み、ダンスを踊り、美術館に行く。眠らなくても平気なぐらいじゃなきゃダメだ!
 で、いったい君のミッションって何だっけ? それはこの本を読んでのお楽しみです。(2・28刊、四六変型判一八二頁・本体一六〇〇円・太郎次郎社エディタス)


歌って歌って毎日を彩ろう
▼うたのすきなねこ ララとルル すてきないちねん
▼松田奈那子 絵・構成
 読み聞かせをしながら、お話と歌が楽しめる、好評シリーズの第二弾です。誰もが心のなかに、歌の記憶を秘めています。ふとメロディを耳にして、「あ、この歌知ってる!」と思う経験って、きっと誰もがしているでしょう。この絵本は、歌の好きなネコのなかよしきょうだい、ララとルルが、そんな歌の記憶をくすぐる一冊です。
 たとえば、いまの季節ならばこの歌。
 ♪はるがきた はるがきた どこに きた
 やまにきた さとにきた  のにも きた
 あれ、いつのまにか、もうそんな季節はすぎていない?むしろ、こちらでしょう。
 ♪やねより たかい こい のぼり
 おおきな まごいは おと うさん
 ちいさい ひごいは こど もたち
 おもしろそうに およいで る
 作者の松田奈那子さんは、上手下手なんて気にしない気にしない、楽しいのがいちばん、ララとルルといっしょに歌いましょう、と書かれています。毎日を歌で彩る、そんなすてきな絵本です。(3月刊、20〓×21〓二四頁・本体一四〇〇円・風濤社)


微笑みが増すおじぞうさん
▼わらいじぞう
▼帚木蓬生作/小泉るみ子 絵
 路傍のおじぞうさんが、なにか微笑んでいる気がする。子どものころ、そんな経験をしたことはありませんか。村をまもり、道行く人をまもってくれるおじぞうさん。微笑んでたたずむ姿に、どれほどの人が安心したことでしょう。
 この絵本は、そんな「わらいじぞう」のお話です。
 ある村のはずれの小さな家に、四人家族が住んでいました。ひとり娘のかなは七歳。お父さんと兄さんは野良仕事で朝星夜星。そんなある冬のこと、お母さんが病気になりました。かなは一人で、畑に弁当をとどけなければならなくなります。
 おじぞうさんの前をとおるたびに、笑顔が増している。かなはふと、そう感じました。だから手を合わせて、はやくお母さんの病気がよくなりますように、とお祈りしてすごします。でも、毎日おじぞうさんの前をとおるお父さんと兄さんは、石のおじぞうさんが笑うはずがない、と信じません。
 そこでかなは、病気のお母さんをつれて、おじぞうさんの前につれていきました。そうして毎日、おじぞうさんにおまいりするうちに、お母さんもおじぞうさんの笑顔に気づいたのです。
 笑顔をわすれない。こちらが笑っていると、おじぞうさんも笑う。そして笑いが笑いを呼ぶ――。この絵本には、そんな大切なメッセージがこめられています。(5・10刊、B5変型判三二頁・本体一二〇〇円・女子パウロ会)


南極探検を生きのびた隊員たちの大冒険
▼シャクルトンの大漂流
▼ウィリアム・グリル 作/千葉茂樹 訳
 探検家のアーネスト・シャクルトンは一九一四年、南極大陸横断の大冒険に出発しました。「南極探検の英雄時代」(一九世紀末~一九一七年)の最後をかざる旅です。シャクルトンと勇敢な隊員たち、二八人を乗せたエンデュアランス号は、こうして南極めざして出港します。
 しかし同船は、巨大な流氷にはばまれて座礁、沈没し、乗組員たちは氷上にとりのこされてしまうのです。彼らの生死をかけた冒険がそこから始まります。この本は、想像を絶する冒険をくぐりぬけた男たちの物語です。
 それにしても、GPSも携帯電話もない時代に、シャクルトンたちはどうやって生きのびることができたのでしょう。この本の最後に、生還したシャクルトンのことばがあります。
 「わたしは仲間たちとともに死線を乗り越えて生きることを選んだ。未知の世界へ乗り出す冒険を求める心は、人間の本能なのだと信じている。たったひとつの真の失敗とは、そもそも冒険をしようとしないことだ」。
 ページをくるたびに、私たちも南極探検の一員になって、勇敢な隊員たちと行動を共にしているような気持ちになります。ぜひこの本を開いてみてください。シャクルトンのことばの意味が、きっと伝わるはずです。(16・10・14刊、B4判七二頁・本体二〇〇〇円・岩波書店)


学年行事がなぜかかるた大会に
▼しりとりボクシング
▼新井けいこ 作/はせがわ はっち 絵
 四年二組の学年行事は、しりとり大会に決まった。え、そんな大会を学年全体でするの?
 学年行事は年に一度、親子で参加する保護者主催のイベント。運動系が多いのに、なぜか今年はしりとりだって。そして、いつもはうだつが上がらず、からかわれてばかりの健太が、なぜか決勝戦に進出! いったい、どんなしりとり大会が繰り広げられるのでしょう。読んでみてね。(12・24刊、A5判一二四頁・本体一三〇〇円・小峰書店)







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