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評者◆伊達政保
映画化されたジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの物語――エチエンヌ・コマール監督『永遠のジャンゴ』
No.3334 ・ 2018年01月13日




■第二次大戦前、戦中、戦後にかけてヨーロッパで活躍した、べルギーのジプシー出身のジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルト。火事で火傷して左手は三本の指しか使えず、そのハンディを克服して独自の演奏方法を編み出し、ジャズではそれまでリズム楽器でしかなかったギターに、メロディ楽器としてのソロ奏法を確立した(ジプシー音楽からすれば当然の奏法なのだが)。1934年、フランス・ジャズ・バイオリンの先駆者ステファン・グラツペリと共に、ジャズでは例のない弦楽器だけのフランス・ホット・クラブ五重奏団を結成。ジプシー・スイング(マヌーシュ・ジャズ)と呼ばれた彼の音楽はデューク・エリントン、コールマン・ホーキンスなど同時代のアメリカ・ジャズ・ミュージシャンに影響を与え、以後もジャズやロックのギタリストに大きな影響を与え続けている。
 オイラが彼の名を知ったのはMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の演奏による「ジャンゴ」(メンバーのジョン・ルイスが彼を追悼して作曲)でだった。しかし、彼の演奏を本格的に聴くことになったのは、75年公開のルイ・マル監督『ルシアンの青春』にジャンゴ・ラインハルトの演奏が全編に使われてからだ。彼の演奏は、前奏やアレンジなど以後の曲にヒントを与えていたことを知った。
 そのジャンゴの物語が映画化された。エチエンヌ・コマール監督『永遠のジャンゴ』。音楽をジャンゴ・ラインハル卜の影響を受けたローゼンバーグ・卜リオが担当している。1943年から1945年までのナチス・ドイツ占領下のフランス、パリ時代のジャンゴの演奏活動を描いている。冒頭、べルギー・アルデンヌの森でジプシーのキャラバンがドイツ軍に襲われ虐殺される。ナチス・ドイツはユダヤ人ばかりでなくジプシー(ロマ)にも絶滅政策を取っていた。ちなみに一年後、アルデンヌの森からドイツ軍最後の大反攻作戦(バルジ大作戦)が行なわれた。
 ジャンゴはナチスから自分や家族を守るため、演奏活動でドイツ軍に協力したり、レジスタンスに協力してドイツ占領下、神出鬼没の演奏活動を行なっていく。彼や彼の家族は終戦まで無事に生き延びた。ジャンゴの奇跡と言われる所以だ。占領下においてある部分謎であった彼の行動を、この映画では音楽シーンを使いドラマチックに描き出している。いま気付いた。ルイ・マル監督は『ルシアンの青春』で、レジスタンスに協力を断られ、それでゲシュタポに協力し、その後ゲシュタポから脱走し殺される少年の反対側にジャンゴの姿を見たのではないか。
 音楽映画としてはもちろんレジスタンスの在り様を描いた素晴らしい映画だ。







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