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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3184 ・ 2014年11月29日
■虔十公園林の名作童話が絵本に
▼虔十公園林 ▼宮沢賢治 作/伊藤秀男 絵 虔十という人はいつもはあはあ笑っている人で、毎日このへんに立って、子どもたちが遊ぶのを見ていました。でも子どもたちは虔十をばかにして、笑いものにしていました。 そんな虔十の家のうしろに、大きな運動場ぐらいの野原が、まだ畑にならないで残っていました。虔十はおっかさんに、杉苗を七〇〇本買ってくれるように頼みました。虔十が願いごとをするなんて、これまでになかったことです。買ってやれというおとうさんの一声で、虔十は晴れて杉の苗を植えることができるようになりました。 ところが、周りのみんなはそれをよく思わず、また笑いものにします。さてどうしたものか。虔十が杉林の前に立っていると、枝打ちをしないのかと、ひとりの百姓が言ってくれました。虔十はそのことばどおりに枝を払い、杉林は並木道のようにきれいになりました。すると、そこに子どもがやってきて、「東京街道」「ロシヤ街道」「西洋街道」と名前をつけて、楽しそうに遊ぶではありませんか。ここはやがて、みごとな虔十公園林となったのです。 宮沢賢治の名作童話に、伊藤秀男さんの絵が光る作品です。(10・20刊、26㎝×25㎝四〇頁・本体一五〇〇円・MIKIHOUSE) ■ふうせんどうぶつのふわふわのぼうけん ▼ティニー――ふうせんいぬ の ものがたり ▼かわむら げんき さく/さの けんじろう え ちいさなこいぬのティニーは、こっそりおうちをぬけだして、さんぽにでかけました。すると、おもちゃのまえにピエロがいて、ティニーのからだにきいろのふうせんをまいてくれました。そのとき、かぜがふいて、ティニーはたかくとんでいきます。ぶあついくもをとおりぬけると、そこには、あかいふうせんをつけたうさぎのラビィがいました。ティニーとラビィはいっしょにとんでいき、いろんなどうぶつとであいます。ふたごのぺんぎん、ぶたのピギー、らいおんのリオンと、つぎつぎなかまがふえていきました。 すると、めのまえにまっくろのにゅうどうぐもがあらわれます。ふうせんどうぶつのくに、バルンおうこくにいくには、このくもをとおりぬけないといけません。さて、たどりつけるのか、みんなふあんがつのります。でもそんなとき、ふうせんのかわがみえてきたのです。みんなはそのかわをつたって、いざバルンおうこくへとむかいます。 ふうせんどうぶつたちがくりひろげる、たのしいふわふわ感にみちたえほんです。(13・11・1刊、28㎝×22・4㎝四〇頁・本体一五〇〇円・マガジンハウス) ■みんながしあわせになるクリスマス ▼ひとりぼっちのミャー クリスマスのよるに ▼たしろ ちさと え・ぶん/ピーター・ミルワード やく あるまちに、ひとりぼっちのねこミャーがいました。やせっぽちでおなかをすかせています。だれもたべものをくれるひとはいません。 ゆきがどんどんふってきて、さみしさもつのります。いくあてもなく、おおきなねこたちにおいかけられて、ふくろにかくれました。なんとそれは、サンタさんのそりにつまれたプレゼントのふくろだったのです。 ミャーをみつけたサンタさんは、かみさまがサンタにくださったプレゼントだとおもって、ミャーをあたたかいおうちにつれてかえりました。 クリスマスはみんながしあわせになる日だと、さくしゃはいいます。たとえいまがつらくてみじめでも、きっときぼうがみつかる。ミャーとサンタのであいに、そんなおもいがこめられています。クリスマスをまえに子どもたちによんできかせたい、たいせつなおはなしです。(10・1刊、25・7㎝×22・6㎝二四頁・本体一一〇〇円・女子パウロ会) ■かたづけがいやでおうさまになっちゃった ▼イーラちゃんはおうさま ▼しまだ ともみ 作 イーラちゃんはあさからイライラ。だってママにしかられたんですもの。かたづけないと、おやつぬきっていわれて、だいすきなドーナツもおあずけです。 でも、イーラちゃんはひらきなおって、かたずけるようすもありません。それどころか、おうさまだったらなにもしなくていいからと、ベッドカバーとシーツでりっぱなおしろをつくり、がようしでおうかんとひげまでつくって、ほんとうのおうさまになってしまったのです。 イーラちゃんはおうさまになったらやりたいことがたくさんありました。まず、けらいにいいつけて、せかいじゅうのおうさまのふくをもってこさせます。こうして、おうさまファッションショーのはじまりです。 こんど、せかいじゅうのおもちゃをもってこさせました。そしてつぎは、ペットをつれてこさせます。 おうさまのごはんは、イーラちゃんのすきなおかし。もうなんでもほしいものがそろいます。でも、よるになると、ひとりでねるのがさみしく、こわくなってきて、おうさま、やーめた!(11月刊、22㎝×18㎝四〇頁・本体一二〇〇円・偕成社) ■「しあさって」をまつくまのこのおはなし ▼あした あさって しあさって ▼もりやま みやこ 作/はた こうしろう 絵 とおくのまちでしごとをしているおとうさんが、もうすぐかえってきます。 「あした、あさって、しあさって?」 くまのこはたのしみでしかたありません。カレンダーにそのひをかいて、ゆびおりかぞえてまつことに。 そのとき、なかよしのうさぎのこがあそびにきました。二ひきはもりのこうえんへいって、きつねのこや、りすのこと、かくれんぼをしてあそびました。 そしてつぎのひ、きつねのこがおとうさんとあるいてくるのにであいます。きつねのこは、とてもうれしそうに、おとうさんとてをつないでいます。 おとうさんはいつかえってくるんだろう。いちにちたったから、しあさってがあさってになったのだけれど、かぞえるのがむずかしくてわからない。うさぎのこが「あと、ふつか」とおしえてくれます。 そうしてくまのこは、まちにまった「しあさって」を、どんなふうにむかえるのかな?(10・20刊、A5判六三頁・本体一一〇〇円・小峰書店) ■転校生ユキちゃんの心をひらいたともだち ▼「あ・そ・ぼ」やで! ▼くすのき しげのり 作/こうの史代 絵 フランスから日本の学校に転校してきた、ユキちゃんの最初の一日。練習したとおりに、ちゃんと自己紹介できたはずなのに、休み時間になると、「なあ、フランスご はなせるんやろ」「なんか フランスご しゃべって!」と男の子にベタベタの関西弁でからかわれるユキちゃん。男の子の冗談に、女の子も笑います。 「わたしは、きめた。もうぜったいに、だれともはなさない」 でも、ユキちゃんがじっとだまっていると、「えらそうにしてる」「なまいきや」といわれる始末。ユキちゃんは涙がでそうになります。と、そのときです。ひとりの男の子がいいました。 「みんな、そんなこというな! ユキちゃんは、きょうから『ともだち』なんやで!」 男の子はショウイチ。みんなショウとよんでいます。ユキちゃんとショウくんはともだちになりました。ぜったいにだれともはなさない、ときめたユキちゃんでした。でも、ショウくんが心をひらいてくれたのです。 「ともだち」ってなんだろう。この絵本にひとつのこたえがあります。(10・26刊、26・7㎝×21・6㎝三二頁・本体一二〇〇円・くもん出版) |
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